2015 Fiscal Year Research-status Report
3D-MEMS加工技術を利用したマイクロ宇宙推進機の抜本的な推進効率の向上
Project/Area Number |
15K14247
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鷹尾 祥典 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (80552661)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 智由 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60378792)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | エレクトロスプレー / イオン液体 / イオンビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はエミッタ製作に主眼を置きそれに必要なプロセス条件の洗い出しから研究を開始した。エミッタ電極の製作方法を以下に簡単にまとめる。(i) ピラニア溶液で洗浄したシリコン表面にCrを蒸着する。(ii) フォトレジストを塗布し、フォトマスクを密着させた状態で紫外線(UV)を照射する。(iii) 現像液によりフォトマスクを転写したフォトレジスト層を製作する。(iv) 不要なCrをエッチングし、ドライエッチングに使うマスクを製作する。(v) 等方性ドライエッチングを行いシリコンウエハ上に鋭角状のエミッタを製作する。(vi) 残ったCrをエッチング液とアッシャーを使うことで完全に除去する。エミッタ電極は1 cm × 1 cmのシリコン基板上に製作しており、その数は4, 12, 44個、ピッチは0.25, 0.5 mmの2種類とし、また、エミッタ先端への導電性を確保するためにAl蒸着を行ったものとシリコンそのままのものの2種類を用意した。本研究では推進剤としてイオン液体のうちEMI-BF4を用いた。宇宙空間を模擬する真空槽内部においてイオン液体のビーム抽出特性を調べるに当たり、まずはコレクタ電極に金属平板を用いて抽出開始電圧を測定した。その結果、エミッタ電極数に依らず電極間距離に応じてほぼ比例した引き出し開始電圧特性が得られた。なお、導電率を上げる目的でAl蒸着させたエミッタ電極の方がAl蒸着無しのシリコンのみのエミッタ電極よりも高い抽出開始電圧となり、予想に反する結果が得られた。この結果を踏まえ、抽出電極にTEMグリッド電極を用いたイオンビーム抽出実験を行った。両極性繰り返し高電圧パルスを印加することにより、陽イオン、陰イオンともにほぼ同じ電圧の絶対値で正負同程度のビーム電流が得られた。エミッタ一つ当たりの電流値は予測される電流値とほぼ一致していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初担当予定の大学院生数が確保できなかったため、エミッタ電極製作プロセスとビーム特性評価を共同研究先と並行して進める事が出来ず進捗は予定より遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度はシリコン製電界放出型電子源の製作で長年に渡り数多くの実績を持つ産業技術総合研究所ナノエレクトロニクス研究部門カスタムデバイスグループの協力(研究協力者)を得てエミッタ電極を含む素子製作を加速させる予定である。素子製作後、引き出されたイオン液体が純粋なイオンだけか、それとも、液滴状になっているかについて、飛行時間(TOF: Time of Flight)測定を行い判定する。さらに、電極にかける電位を反転させた際に、陰イオンが陽イオンと同じ引き出し特性になるかについて解析する。2015年度には電極の数が4~44においてイオンビーム抽出特性に関してスケーラビリティが得られることを確認している。2016年度はこれを100、1,000と増やしていき同様にスケーラビリティが得られるかについて把握する。可能であれば推力が実用レベルに達する10,000へと電極数を増やしていく。もし一つの素子に多くの電極を配置することで必要な電流量を確保出来ない場合は、複数の素子を用いることを検討する。そして、抜本的な推進効率の向上に不可欠な機構であるPIR (Purely Ionic Regime) が得られる条件を突き詰めていく。最終的に、イオンビームの電流量や発散角を計測することで推進性能の評価を行う。また、キャピラリ構造の内径・長さ、ならびに電極間の電場構造の解析により最適な推進剤流量制御法の構築を目指す。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた額は当該年度所要予定額に対して0.25%であり、予定通り使用したと言える範囲と考えている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の通り残額は極僅かであり、当初予定通り次年度も使用を行う。
|
Research Products
(4 results)