2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14588
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
梶田 忠 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80301117)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 浩司 ふじのくに地球環境史ミュージアム, その他部局等, 准教授 (60647478)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 種分化 / 輪状種 / 汎熱帯海流散布植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の梶田がH27年5月1日に、琉球大学熱帯生物圏研究センター西表研究施設に異動したことから、今年度は主に、交配実験に必要な生株を栽培するための環境整備と、栽培実験を集中して行った。西表研究施設に現有のガラス温室を整備し、ナガミハマナタマメ(Canavalia rosea)を多数栽培できる環境を整えた。また、1990年代以来の現地調査で採集した、19ヶ国38集団から得られた種子を播種し、栽培実験を開始した。これまでに860個の種子を発芽実験に用いたところ、以下の6地域、13ヶ国から、62株の生育株を得ることができた。 【太平洋西南部(マレーシア、サモア、バヌアツ)ー太平洋東部(コスタリカ太平洋岸)ー大西洋西部(プエルトリコ、ホンジュラス、コスタリカ大西洋岸、ブラジル)ー大西洋東部(アンゴラ、セネガル)ーインド洋北部(インド、スリランカ)ーインド洋東部(オーストラリア)】 これらの生育株は順調に生育しているが、栽培環境の整備に時間を要したため、年度内の開花および交配実験には至らなかった。これらの実験の過程で、地域ごとの種子サイズ、形態、重量、浮遊性などは計測済である。また、栽培・計測実験のほとんどは、研究協力者の梶田結衣博士によって行われた。 遺伝解析実験では、これまでに行った葉緑体マーカーおよび核マーカーを用いた、サンガーシーケンシングによる実験の結果をまとめて解析し、論文作成を開始した。また、次世代シーケンサーを用いて解析するための、DNAサンプルの準備を行った。 メキシコおよびパナマで実施予定だった現地調査は、調査予定地域の政情が不安定だったため、次年度以降に延期した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年5月に研究代表者の梶田が琉球大学熱帯生物圏研究センター西表研究施設に異動になり、新たに研究環境を整備することになった。本事業の実施のために必要なガラス温室は、西表研究施設には現有のものがあったが、長い間使われていなかったため、修繕と整備に時間を要した。台風の襲来が多かったのも、温室の整備が遅れた要因の1つである。 海外調査はメキシコおよびパナマで実施する予定であったが、メキシコの調査地域近辺(メキシコ中西部)での政情不安定のため、渡航をとりやめた。遺伝子解析実験も、異動先の実験室に必要な機材が十分に揃っていなかったため、準備に時間を要した。 ただし、過去の調査で採集した種子を発芽・栽培する実験は、温室の環境が整備された後は順調に進んでいる。すでに、6地域、13ヶ国からの生育株が栽培できた点は、当初の計画以上に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
■交配実験: H27年度には、6地域、13ヶ国、62個体という、当初の計画以上の生育株を得ることができた。これらが全て順調に開花すれば、生育株を得る予定地域として不足しているのは、インド洋西部(東アフリカ)の集団のみである。これについても、保有している種子をさらに播種することで、生育株を得る努力を続ける。H28年度4月以降の数ヶ月は、これらの生育株を開花させるよう、栽培実験に専念する。すでに、新大陸の東・西のそれぞれから生育株を得ており、開花に至れば、レシプロカルな交配実験を実施することができる。交配実験後は、結果率、種子数などを計測する。 ■現地調査: 28年度に、パナマでサンプルを採集する。種子サンプルは状態に応じて、帰国後すぐに播種し、年度内に開花させることを目指す。平成28年度内に十分な交配実験が行えなかった場合にそなえ、平成29年度以降も実験を継続するために、生株も採集しておく。 ■遺伝解析: 前年度に準備したDNAサンプルを用いて、RAD-seqを用いた遺伝解析を実施する。28年度後期に実験をおこない、SNPデータの解析後、アウトライアー解析を行う。中立的な挙動をするSNPのみを用いて、集団の遺伝構造、集団間の遺伝子流動、明瞭に分化した集団間の分岐年代を解析し、新大陸の東西集団では遺伝子流動が無いが、それ以外の隣接集団同士では、遺伝子流動が保たれているという仮説の検証を試みる。 ■論文作成・学会発表: H28年度中には、これまでにサンガーシーケンシングで行った、遺伝子解析実験の結果を論文発表する。また、交配実験がうまく進めば、栽培実験、形態計測で得られたデータをまとめ、投稿論文を作成する。
|
Causes of Carryover |
海外調査はメキシコおよびパナマで実施する予定であったが、メキシコの調査地域近辺(メキシコ中西部)での政情不安定のため、渡航をとりやめたことから、海外調査旅費を使用しなかった。また、H27年5月に研究代表者の梶田が琉球大学熱帯生物圏研究センター西表研究施設に異動になり、新たに研究環境を整備することになった。遺伝子解析実験は、異動先の実験室に必要な機材が十分に揃っていなかったため、準備に時間を要し、予定していた実験消耗品費を使用しなかった。また、異動先でガラス温室の修繕と環境整備に時間がかかったため、予定していた期間栽培実験を行うことができず、人件費を使用しなかった。そのため、次年度使用額として、993,735円が生じた
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに、過去の調査で採集した種子を発芽・栽培する実験は、温室の環境が整備された後は順調に進んでいる。すでに、6地域、13ヶ国からの生育株が栽培できた点は、当初の計画以上に進んでいるため、栽培および交配実験に、初年度交付申請時に予定していたよりも、倍以上の期間と労力を要する見込みである。そこで、次年度使用額の993,735円は、栽培・交配実験のための人件費として用いることを計画している。
|
Research Products
(1 results)