2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K14588
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
梶田 忠 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80301117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 浩司 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (60647478)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 輪状種 / 種分化 / 汎熱帯海流散布植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
■概要: H28年度には前年度までの研究の遅れを十分に取り戻すことができた。栽培実験および交配実験も軌道にのり、研究計画は順調に進捗している。 ■交配実験:新大陸太平洋側、新大陸大西洋側、西アフリカ、東アフリカ、インド洋北部、東南アジア(インド洋~太平洋)、オーストラリア、南太平洋の8地域から19集団85個体を西表研究施設のガラス温室で栽培し、16集団で開花した。また、16集団で実施しうる256通りの雌雄相互の人工交配実験の組み合わせのうち、74の組み合わせで人工交配を実施することができた。交配実験の結果得られた果実と種子については、人工授粉の成功率、結果率、種子数などを計測できた。また、交配実験の結果得られたF1種子については、播種・栽培実験を開始した。 ■現地調査: 現地での開花・生育状況の確認と、今後のサンプリングの検討のために、パナマで現地調査を実施した。太平洋側で、以前確認していた集団は消失していた。カリブ海側では、生育状況・開花状況が確認できた。 ■遺伝解析: ガラス温室で栽培した個体からDNAを抽出し、次世代シーケンシングを用いたリシーケンシングデータを取得した。得られたデータは、今後、交配実験の成功を確認するための、MIG-seq法を用いた遺伝解析の際に、リファレンスとして用いる。 ■論文作成・学会発表: H28年度中に予定していた論文発表は、遅れている。栽培実験、交配実験は順調にすすみ、得られたデータをまとめ、学会で発表した。 ■研究協力者: 本研究の実施には、梶田結衣(琉球大)、山本崇(鹿児島連大・農)、栄村奈緒子(京大生態研センター)、Alison KS Wee(広西大学)の他、井村信弥、石垣圭一、堤ひとみ(以上3名、熱生研西表研究施設職員)らが研究協力者として参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
琉球大学熱帯生物圏研究センター西表研究施設では、現有のガラス温室を本実験で使用できるように、H27年度から整備を開始した。H28年度も、設備の老朽化等のために、様々な障害が生じたが、年度内には概ね整備を終えた。大きな台風による被害も無く、また、播種した種子からも順調に生育個体が得られたため、 1999年以来の現地調査で世界各地で採集した計19集団から生育個体を得ることができた。これは、研究計画当初に予定していた6集団を大きく上回る成功率と言える。19集団のうち16集団からは開花個体も得られたことから、計画を上方修正し、16集団で256通りの相互組み合わせによる掛け合わせ実験を実施している。年度内におよそ全体の4分の1の掛け合わせ実験を終え、また、栽培および交配実験の手法も整備できた。 以上のように、ガラス温室の環境の整備には時間を要したが、今後も、台風等の予想外の被害が生じない限りは、今後の栽培実験は順調に推移する見込みである。 論文作成の方にやや遅れが生じたのは、栽培実験の方に注力したためであり、次年度には遅れを取り戻せる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
■交配実験: 今後は栽培中の16集団を基本に、各集団間の雌雄相互全組合わせ(256通り)について20 回以上の交配実験を行うことを目標に実験を進める。すでに74組み合わせについては実験を終えている。さらに、交配実験で得られたF1種子を播種し、発芽率を測定し、また、開花個体を栽培してF2の作出を試みる。同時に、次の研究への発展を見据えて、自殖系統確立のための実験を継続的に行う。 ■遺伝解析: 栽培中の全個体(親個体およびF1個体)からDNAを抽出し、遺伝解析に用いる。親個体は可能な限り全てについてリシーケンシングデータを得て、集団間の遺伝的分化の程度をゲノムレベルで比較する。また、全サンプルについては、当初計画のRADseq法をやめ、より簡便かつ迅速にデータを得ることができるMIG-seq法を用いた遺伝解析を実施し、F1個体の交配が成功していることを確認する。同時に、得られたSNPデータを解析して、新大陸の東西集団では遺伝子流動が無いが、それ以外の隣接集団同士では、遺伝子流動が保たれているという仮説の検証を試みる。 ■論文作成・学会発表: H29年度中には、これまでの遺伝子解析実験の結果を論文発表する。また、交配実験のデータもとりまとめ、投稿論文を準備する。研究成果を日本植物学会、日本植物分類学会等で発表する。交付申請時に計画していたIBC2017における研究発表は行わない。
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Causes of Carryover |
H28年度は、本研究の栽培・交配実験のために当初計画を超える人件費の使用を予定していたが、人件費を使用することなく、予定していた実験を終えることができた。人件費を使用する必要がなくなった理由は、栽培・交配実験のために予定していた研究協力者が、年度途中から琉球大学熱帯生物圏研究センターの非常勤職員として琉球大学の経費で雇用され、かつ、本研究に従事することができたためである。また、パナマにおける海外現地調査も、他研究費を充てて実施することができた。これらの理由で、次年度使用額として、1,303,498円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度は本研究課題の最終年度である。これまでの研究で、栽培・交配実験の環境は十分に整備され、実験計画は規模を拡大して順調に進んでいる。栽培および交配実験の規模は、初年度交付申請時に予定していたよりも、倍以上になることが予想される。そこで、次年度使用額のほとんどは、栽培・交配実験のための人件費として用いる。また、リシーケンシングなど、次世代シーケンシングを用いた遺伝解析にも用いる。
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Research Products
(3 results)