2015 Fiscal Year Research-status Report
地質由来重元素安定同位体比を用いた、生物の移動履歴情報に関する精密解析手法の開発
Project/Area Number |
15K14602
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
陀安 一郎 総合地球環境学研究所, 研究高度化支援センター, 教授 (80353449)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 安定同位体 / 重元素 / 硬組織 / ストロンチウム / 生息履歴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、いままで生態学分野でほとんど利用されて来なかった、地質由来の「微量元素濃度」および「重元素安定同位体比(ストロンチウム(Sr)・ネオジミウム(Nd)・鉛(Pb)などの同位体比)」を用いて、生物の移動履歴情報を精密に解析する手法の開発を行うことを目的としている。 本年度は、主として岩手県大槌地域の淡水型のイトヨを材料として研究を行った。重元素同位体比としては、陸水域において生息水域情報を反映すると考えられ、分析に必要な試料量が少ないストロンチウムの同位体比を表面電離型質量分析計で分析し、同時に微量元素濃度を誘導結合プラズマ質量分析計で分析した。ストロンチウム同位体比とともに、微量元素濃度の情報を合わせることで、生物の生息地域の把握精度を高めることができる。 その結果、イトヨ生息水域の溶存態ストロンチウム同位体比は、地域的なまとまりをもった4グループに分かれることがわかった。また、物理的に明確な隔離生息地のイトヨの耳石と生息水域のストロンチウム同位体比の比較から、それらがほぼ一致することを確認した。河川支流内で、溶存態ストロンチウム同位体比に差異のある支流河川について、耳石と溶存態ストロンチウム同位体比を比較した。その結果、支流河川上流のイトヨ個体群には下流域から移動してきた個体は見られないが、支流河川下流のイトヨ個体群には上流の個体群や小鎚川本流や別の支流河川から移動してきたと考えられるイトヨが混在していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究で、陸水域における小流域スケールでのストロンチウム同位体比の利用可能性が明らかとなった。この部分に関しては十分なデータを得られたため、早急に論文化を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ストロンチウム(Sr)に加え、ネオジミウム(Nd)・鉛(Pb)などの同位体比も本研究において研究する対象になっているが、生物においてこれらを合わせた多元素同位体分析はほとんど行われていない。これらを測定するための試料は平成27年度に採集されているため、平成28年度はこれらの分析を行い、重元素安定同位体比を用いた研究の取りまとめを行いたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本研究では、試料採集にあたる経費と分析に要する経費が大きな研究経費の使用目的となるが、平成27年度は試料採取に重点を置いたために経費使用が予定よりも少なくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に採取された試料について、平成28年度に集中的に重元素の安定同位体分析を行う予定である。
|
Research Products
(4 results)