2016 Fiscal Year Research-status Report
セロトニントランスポーター遺伝子のSアレルを有する日本人の生理人類学的特徴
Project/Area Number |
15K14620
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
綿貫 茂喜 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00158677)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子多型 / 生理的多型 / 生理人類学 / 実験心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは、外界からの膨大な情報の中から必要な情報に注意を払うことから、「自己」及び「他者」という刺激は注意の認知過程に影響を及ぼす可能性が考えられる。また、性格特性における情緒不安定性、BIS、拒否回避欲求が高い個体は、不安を感じやすい特性を持ち、神経症や抑うつなど各種精神疾患と強い関連がある。従って、各種精神疾患をもたらす要因に「自己」及び「他者」という刺激に対する注意の認知過程の差異が関係する可能性が考えられる。そこで、「自己」及び「他者」という刺激に対する注意の認知過程に着目し、このような「自己」及び「他者」という刺激によってもたらされる注意の認知過程の差異を説明できる要因はどのような性格特性であるのかをセロトニントランスポーター遺伝子多型に着目し、明らかにする。被験者は、大学生・大学院生60名とした。自己」及び「他者」という刺激が注意の認知過程に及ぼす影響について、ERPを用いて明らかにした(第1実験)。次に、「自己」及び「他者」に対する注意の認知過程と性格特性の関連について、ERPを用いて明らかにした(第2実験)。 第一実験の結果、「他者」という刺激は、受動的注意を引き起こすことが示唆された。また、「他者」という刺激は、「自己」という刺激よりもより多くの注意が向けられ、その注意は持続されることが示唆された。 第二実験の結果、Big Fiveの下位項目及びBIS/BASの下位項目は、「自己」及び「他者」という刺激への注意には影響を及ぼさないことが示唆された。しかし、賞賛獲得欲求が高い人と拒否回避欲求が高い人は、「他者」という刺激よりも「他者からの評価」に注意することが示唆された。 さらに、賞賛獲得欲求・拒否回避欲求はBig Fiveには影響を及ぼさないことが示唆された。しかし、拒否回避欲求はBIS/BASのBISと関連することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
セロトニントランスポーター遺伝子多型には3タイプ(LL型、LS型、SS型)があり、日本人にはSS型がかなり多い。LL型の被験者が少ないため、SS型との比較分析を実現できていない。今後LL型被験者の増加が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
セロトニントランスポーター遺伝子多型のLL型の被験者が少ないため、被験者の増加が必要である。前年度遺伝子解析ができなかった被験者について、再度分析を行い、LL型被験者の増加を目指し、遺伝子多型タイプによる生理心理値の比較・分析を行い、それに対する考察をする。また、研究成果を論文に取りまとめ国際誌への投稿を積極的に進める。
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Causes of Carryover |
セロトニントランスポーター遺伝子多型には3タイプ(LL型、LS型、SS型)があり、日本人にはSS型がかなり多い。SS型の生理心理的特長を抽出するには対立遺伝子のLL型の被験者の生理値が統計学上ある一定人数以上必要である。現在のところLL型の被験者が少ないので鋭意増加させるべく努力をしているが、タイプの分析およびそれに基づく生理心理値の比較、それに対する考察時間を考えると、期間を延長する必要があった。また、次年度に解析するための人件費が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
セロトニントランスポーター遺伝子多型のタイプ分析および生理心理値の比較を行う。また、考察し、取りまとめて得られた研究成果を国際誌へ投稿できるよう積極的に進めていく。
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