2016 Fiscal Year Research-status Report
魚類の卵母細胞を標的とする分子輸送体を産生するトランスジェニックメダカの作製
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15K14797
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10443920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子輸送 / バイオリアクター / 卵 / ビテロジェニン / メダカ / 生物工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、卵に特異的に発現する受容体を標的として、親魚から卵・仔魚へ世代を超えて様々な有効物質を輸送することのできる、分子輸送システムを開発することである。試験期間内の到達目標は、遺伝子組換え技術によるモデル分子輸送体の生体内生産に挑戦し、将来的に同輸送体を大量生産する生物工場(バイオリアクター)開発に向けた萌芽的技術基盤を得ることである。H28年度は、昨年度作製したモデル蛍光輸送体ベクターコンストラクトの生体内発現試験、並びに新規コンストラクトの作製・生体内発現試験を行い、以下の成果を得た。 ・卵黄前駆体ビテロジェニンの受容体結合領域候補配列(VRBP:2種類)と赤色蛍光蛋白質(DsRed又はmCherry)の融合蛋白質をコードするモデル蛍光輸送体ベクターコンストラクトを計5種類、並びに緑色蛍光蛋白質(GFP)を単独でコードするベクターコンストラクトを計2種類用意し、メダカ受精卵への遺伝子導入に供した。 ・上記コンストラクトの遺伝子導入に向け、ベクター濃度等の最適化試験を行い、最適条件を確定した。 ・VRBP/蛍光蛋白質融合輸送体の場合、DsRed融合では蛍光が微弱すぎて観察が困難であった。一方、mCherry融合では観察に十分なレベルの蛍光モデル輸送体を発現する組換えメダカ胚が作製された。 ・GFP単独発現の場合、2種の強制発現系(pCAGGS系及びTol2系)を比較した結果、両発現系共に蛍光性を有する組換えメダカ胚の作製に成功したが、pCAGGS系の方がより安定して強い蛍光を有する個体が作出できる傾向があった。 ・VRBPとビオチン結合性リンカー(アビジン)の融合蛋白質をコードするモデル輸送体ベクターコンストラクトを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、蛍光モデル輸送体にはDsRedを使用し、これを発現する組換えメダカを作製する予定であったが、実際に初代組換えメダカを作製した際にDsRed由来の蛍光が微弱であった。このまま研究を進展した場合、今後同モデル輸送体に関する輸送動態の可視化が困難となることが予想された。そのため、融合する蛍光物質を、DsRedより蛍光強度の高いmCherryに変更し、再度組換えメダカの作製を行い可視化に適した蛍光強度が得られた。この予期せぬ再作業ため、当初予定より「やや遅れている」と評価した。しかし、可視化可能な蛍光強度を持つ初代(F0)組換えメダカの作製には成功しており、今後の研究の継続には問題はない。現報告時点において、F0個体は性成熟期にあり、次世代F1およびF2の作製はH29年度内に達成可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、組換えF1・F2ラインの確立を行い、蛍光モデル輸送体に関して卵母細胞への輸送動態を観察することで、その輸送機能について実証する。また、当初、蛍光輸送体の機能確認を終えてから実施する予定であったVRBPとリンカーの融合コンストラクトの生体内発現についても、本年度に並行して実施する予定である。これにより、H28年度の遅れを解消できると考える。VRBP・リンカー融合蛋白質の生化学的性状解析は、これを発現する組換えF0個体から得た卵で行う予定である。
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