2015 Fiscal Year Research-status Report
脂溶性EGCg誘導体を利用した脳内カテキン受容体・結合タンパク質の同定と解析
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15K14971
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩田 修永 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70246213)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / ネプリライシン / αセクレターゼ / βセクレターゼ / カテキン / カテキン結合タンパク質 / カテキン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の年次計画に従って実験を進めた。代表的なカテキンである(-)-epigallocatechin-3-O-gallate(EGCg)のA環に長鎖アルキル基を持つカルボン酸を結合させた誘導体を化学合成し、二種類の磁気ビースにN-ヒドロキシスルホスクシンイミドと1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを用いて脱水縮合によりカップリングさせた。ネガティブコントロールとしてアルキル鎖のみを固定化させた磁気ビーズを作製した。これらの磁気ビーズと神経系細胞抽出液(膜画分)を反応させ、カテキン結合タンパク質を塩濃度勾配で溶出させた。各画分のサンプルをSDS-PAGEで分離後、バンドをゲルから抽出後トリプシン消化して質量分析法によりタンパク質を解析した。その結果、ネガティブコントロール用磁気ビーズには結合せず、二種類のカテキン磁気ビーズの両方に結合する複数のタンパク質を同定した。同定したタンパク質のうち複数回行った実験で再現性が得られた分子の中から二つの分子(遺伝子Aと遺伝子B)に着目し、これらのタンパク質をコードする遺伝子を安定的に発現する過剰発現細胞を作製した。これらの細胞を用いて、我々が見出した脂溶性カテキン誘導体によるネプリライシンおよびαセクレターゼ活性増強作用およびβセクレターゼ活性抑制作用を評価した。現在までに、遺伝子Aはβセクレターゼ活性抑制作用に、遺伝子Bはネプリライシン活性増強作用に関与する可能性を示唆するデータを得ている。現在、この結果を確認するため、これらの遺伝子の過剰発現細胞の複数のクローンとRNAiを用いたノックダウン細胞を用いた解析を行っている。さらに、より網羅的にカテキン結合タンパク質を同定するために、様々な界面活性化剤で可溶化した膜画分や可溶性画分を用いて、引き続きカテキン結合タンパク質の同定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は、アルキル鎖の導入で脂溶性を付与したカテキン誘導体が、アルツハイマー病(AD)の一次原因分子アミロイドβペプチド(Aβ)の主要分解酵素であるネプリライシンやAβ産生を抑制するαセクレターゼの活性とAβ産生に関わるβセクレターゼの活性を遺伝子発現を介して、それぞれ増強・抑制することで、効率的にAβレベルを低下させる能力があることを見出した。本研究では、脳内カテキン結合タンパク質(受容体)を同定し、これらの誘導メカニズムを明らかにすると共にこの結合タンパク質を介する創薬研究の基盤構築に資することを目的とした。幸いにも初年度において、ネプリライシンまたはβセクレターゼ活性に影響を与えるカテキン結合タンパク質の同定に成功しており、研究計画に照らし合わせても当初の目的を達成していると言える。また、上述のように本年度も引き続き、より網羅的にカテキン結合タンパク質を同定するために、様々な界面活性化剤で可溶化した膜画分や可溶性画分を用いて、カテキン結合タンパク質の同定を進めている。また、候補遺伝子のcDNAおよびsiRNAを株化神経系細胞だけでなくマウス初代培養細胞へトランスフェクションする条件等も確立しており、解析を待つ状態になっている。このように、本研究は当初の計画通り順調に進んでおり到達度は高い。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果を踏まえ、まずは最初に同定したネプリライシンとβセクレターゼの遺伝子発現に関わる二種類のカテキン結合分子にターゲットを置き、磁気ビーズによる共沈実験だけでなく、表面プラズモン共鳴法を用いた分子間相互作用解析装置を用いて脂溶性カテキン誘導体や既存薬との結合親和性などを明らかにするとともに、その分子機構をin vitroだけでなく、in vivoも含めて明らかにすることにより、副作用が少なく安全性が担保される創薬を目指す。 一方、申請者らが合成した脂溶性カテキン誘導体によるネプリライシン、αセクレターゼおよびβセクレターゼに対する作用は一様ではなく、またそれぞれの作用機序も複数存在すると推測されるため、網羅的にカテキン結合タンパク質を同定することが必要であり、引き続きこの実験を進めていく。
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