2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14979
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
大高 章 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (20201973)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 抗体医薬 / チオエステル / 配列選択的反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質チオエステルは、タンパク質を部位特異的に修飾し、均一性の高い複合体分子などを創製するうえで極め有用な反応中間体である。そこで汎用性が高いタンパク質チオエステル調整法の開発が求められている。本研究では、いまだ成功例のない発現タンパク質に適応可能なチオエステルの化学的調整法の創出を行い、これを基盤に抗体医薬品の高機能化に有機化学的な観点から取り組み、従前の遺伝子工学的手法のみでは到達不可能な半合成抗体様分子創出法を開拓することを目的とするものであり、本年度は以下の研究成果を得た。 発現タンパク質からタンパクチオエステルを可能とする化学反応系の開発を行った。現在利用できる方法論はチオエステル化したいタンパク質のC 末側に130 残基を超えるIntein タンパク質を融合させ、Intein 配列が有するアシル基転位反応を促進する酵素用作用によりチオエステルを調製する方法論であるが成功確率は決して高くない。そこでIntein 配列のチオエステル形成に関与する機能をアミノ酸10 残基以下の短鎖ペプチド配列で模倣する計画を立て、特定の4残基のペプチドへのNiの配位を引き金とする4つの連続するアシル基転移反応を利用する方法論を基礎反応レベルではあるが開発することに成功した。また、合成ペプチドに本反応を応用することで天然アミノ酸からのみからなるペプチドの初の化学的チオエステルへの変換を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記したようにチオエステルへの変換反応に利用されているインテインの作用を特定の短鎖ペプチド配列とこれに対する金属の配位と続く連続的なアシル転移により模倣することに成功した。この新しい反応システムの応用例は現状ではまた比較的小さなペプチド分子に限定されているが、インテイン作用の化学的模倣が達成された意義はきわめて大きい。このような観点より、研究計画はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画どおり、開発した反応システムの長鎖ペプチド、タンパク質への応用、さらには発現タンパク質のチオエステルへの変換に取り組み、半合成抗体様分子調製のための化学的基盤を確立する予定である。具体的には開発したNiを利用したチオエステル化反応の最適化および長鎖ペプチドへの展開性について詳細に検討する。また、この反応以外の発現タンパク質適応可能な反応の精査を行う。例としてシステインの位置選択的シアノ化反応を利用する予定である。これらを利用することで抗体部分タンパク質の位置選択的修飾反応について検討する。
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Causes of Carryover |
器具や試薬について、既存のものを使用することができたため、物品費を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度予算と合わせ、研究遂行に必要な物品を購入する。
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