2015 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞からの神経誘導システムを用いた統合失調症の病態解析
Project/Area Number |
15K15033
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松下 正之 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30273965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 朋子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30420821)
岡野 ジェイムス洋尚 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90338020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | iPS / schizophrenia / mood disorder |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症、双極性障害などの精神疾患は遺伝性が認められていますが、その分子レベルでの発症機序は不明です。脳は複雑な神経ネットワークより構築され、高度な機能を司る器官であるため、遺伝子異常に基づいて構築される構造や機能変化は、多彩な表現型を示すことや、多種の遺伝子の変異が同様な表現型を引き起こす可能性(遺伝的異質性)があります。そのために、精神疾患の症状のみからの疾患候補遺伝子の探索は困難であると認識されています。沖縄では、統合失調症などの家族内集積を認める患者家系が多く存在し、3世代にわたる家系が多数あることが知られています。本研究では、これらの家系から血液サンプルを採取し、疾患iPS細胞の樹立と次世代シーケンサを用いたゲノム解析から病態に強く関わる遺伝子群の同定を試みました。iPS細胞の樹立研究では、神経細胞を疾患iPS細胞から誘導し分子生理学的にイメージング技術を用いてシナプス形成や機能的評価を行う計画で、すでに疾患iPS細胞の樹立に成功しています。また、シーケンサ解析により得られた病態に強く関わる遺伝子群は、沖縄における統合失調症患者と非罹患者において、発現などを比較する事により、最も違いの大きな遺伝子を抽出し、臨床においての信頼性の高い分子診断マーカーとして活用することが可能になります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
県内の精神科病院と連携して調査を行い双極性障害、統合失調症の精神疾患家系を見いだし、研究協力の承諾を得た。さらに、家系内の患者、比罹患者から血液を採取し、ゲノム解析やiPS細胞作成を行った。精神疾患のゲノム解析およびiPS細胞作成に関して、ヒトゲノム・遺伝子解析研究および臨床研究倫理審査の承認を得た上で、患者家系調査を行い、双極性障害や統合失調症の大家系を発見している。また、患者iPS細胞の樹立を行った。ゲノム解析においては、双極性障害家系でのSNP アレイにより、特異的なホモ接合領域を発見し、その領域のシークエンスを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
沖縄については、発症頻度は他府県と大きく差は認められないものの、離島などでは、家族集積が認められる家系が多数存在する。これは、発症が遺伝的に強く関わっていることが推定され、ゲノム解析、発現解析によって、発症に重要な遺伝子が見つかる可能性が高い。少なくとも、患者で共通する遺伝子発現変化をとらえることで、信頼性の高い診断マーカーを抽出することが可能である。この診断マーカーを見いだし、これらの家系のiPS細胞の樹立と保存からは、統合失調症などの詳細な病態解析、原因究明、治療研究へつなげる計画である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の当初計画では、疾患iPS細胞の作成を疾患家系内で3ライン以上作成する予定であったが、手技の確立などのため1ラインのみの作成となった。そのため、iPSC作成の培養関係消耗品などの使用計画で差異が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した経費に関しては、平成27年度予定の疾患iPS細胞ラインの作成に使用し、当初予定の目標のライン数を得るで計画である。
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