2016 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を用いたミトコンドリアDNA維持機構の破綻と神経変性への関与
Project/Area Number |
15K15083
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森野 豊之 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (10397953)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 脳神経疾患 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは,これまでに神経変性疾患の原因変異を同定し,その変異から病態機序を解明する研究を行ってきた.これまでに家族性ALSの新規原因遺伝子optineurinや家族性脊髄小脳変性症の原因遺伝子CACNA1G,Perrault症候群の新規原因遺伝子C10orf2などを同定してきた.本研究の目的は,Perrault症候群の新規原因遺伝子として同定したC10orf2の変異がミトコンドリアDNAの維持機構を障害し,神経細胞死にいたる過程を培養細胞レベルで再現することである.iPS細胞を樹立する際にミトコンドリアDNAの異常が初期化されることを利用して,患者由来iPS細胞を小脳プルキンエ細胞に分化させることで,実際の神経細胞内でミトコンドリアDNA異常が蓄積されていく様子を経時的に観察する.ミトコンドリアDNA異常は老化の観点からも重要であり,本研究の成果を応用することで,培養細胞での老化の評価を行うことができる可能性もある. 本年度も昨年度に引き続き患者由来iPS細胞の樹立を行い,FGF2などの神経成長因子を用いて神経細胞への分化誘導を行った.その結果,もともとの遺伝子異常に起因するためかコントロールとして樹立したiPS細胞に比べて未分化状態が不均一であった. 患者由来iPS細胞の未分化状態が不十分であったため,引き続き患者由来線維芽細胞からのiPS細胞の樹立を行う.その後の解析にはある程度の数の細胞株が必要であるため,十分な細胞株が得られたらミトコンドリアDNA異常の評価を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Yamanaka法に準じて患者から得られた線維芽細胞を用いてiPS細胞の樹立を行った.未分化状態と神経細胞への分化誘導を行った状態で免疫組織学的に評価した.その結果,患者由来iPS細胞は未分化能が低く,神経細胞への分化誘導効率も悪かった. これまでの検討で,本疾患の原因遺伝子であるミトコンドリアDNAのヘリケースが欠損することによってミトコンドリアDNAの維持機構が障害され,患者由来の細胞では既にミトコンドリアDNAに変異が蓄積されている可能性が否定できない.その後の検討でミトコンドリアDNAの変異がキャンセルされた細胞株を選択するためにも,ある程度の数の株が必要になるため,引き続き質の良いiPS細胞が樹立できるようにプロトコールを再検討していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
十分な未分化能や神経細胞への分化誘導効率が得られた時点でミトコンドリアDNA異常の評価を行う.Perrault症候群で認められるミトコンドリアDNA異常としては,欠失,量的減少,点変異などのバリエーションがあるため,それぞれlong-range PCR,定量PCR,次世代シーケンサを用いたターゲットシーケンスによって解析を行う.神経細胞への分化誘導として,一般的なFGF2などの成長因子による分化方法のみならず,小脳プルキンエ細胞への分化誘導も試みる. 患者由来iPS細胞と遺伝子異常をゲノム編集技術で正常化したコントロールiPS細胞を用いて,継代を重ねながらミトコンドリアDNA異常の経時的な変化を観察する.さらに,小脳プルキンエ細胞への分化誘導を行った後に培養細胞レベルで生存率が変化するかを確認する.
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Research Products
(4 results)