2015 Fiscal Year Research-status Report
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた機能的疾患に対する剖検診断の試み
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15K15262
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中原 綾 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (80719005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 琢磨 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (50634458)
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60617421)
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
坪井 貴司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80415231)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人工多能性幹細胞 / マウス / 死後 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医剖検例における突然死例の法医剖検診断では、有意な所見が少なくないために死因の判断に苦慮することをしばしば経験する。これらの死因には致死性不整脈が含まれるものと考えられているが、病態の本質が機能的なものであるため、剖検診断は除外診断に頼ざるをえず、積極的診断は不可能とされてきた。また、特に乳幼児例であるが、CPT2遺伝子の点突然変異に代表されるような脂肪肝等の特異的な病理所見を呈さない代謝疾患による突然死例の存在が知られている。さらに、向精神病薬や覚醒剤等が影響する薬剤性誘発性の不整脈は個人差が存在することも知られている。繰り返しなるが、これらは全て機能の変異による死亡であるので形態学をベースとする従来の法医剖検法ではその診断は不可能である。 人工多能性幹細胞(iPS細胞)は体細胞にリプログラミングを行うことで、最終的に心筋・肝細胞等へと分化を可能とする。 法医剖検が対象とする死後の臓器からはこれら細胞を分離して電気生理学的・代謝機能を直接的に測定することはできない。申請者らは死体由来の線維芽細胞の培養を日常の法医実務にて施行しており、この死体由来の線維芽細胞をiPS化し心筋・肝細胞に分化可能であれば、電気生理学的・代謝機能等の細胞機能を直接的に計測できる。このことは、今までの形態学的手法を基礎とした法医剖検診断に対して、機能を考慮した死因診断を可能とするという革命的な手段をもたらすこととなる。 現在、動物モデルにて死後経過が数日程度経過した死体由来の線維芽細胞を培養している。今までに死後2日以内であれば線維芽細胞を培養可能であり、3日目では不可能であった。今後、引き続いてiPS化を行い、iPS細胞より心臓・肝臓に分化させたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物モデルにて死後経過が数日程度経過した死体由来の線維芽細胞を培養しており、今までに死後2日以内であれば線維芽細胞を培養可能であり、3日目では不可能であったことが判明したため、今回このように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続いてiPS化を行い、iPS細胞より心臓・肝臓に分化させたいと考えている。 また、別研究でヒト死体では、3日目以降でも線維芽細胞培養は可能であったが、マウスではできないことが判明した。今後行うヒト由来細胞を使用する場合では3日目以降の試料も用いたい。
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