2015 Fiscal Year Research-status Report
バスケットボール試合中のシュート成功率を高める“良い”シュート動作の解明
Project/Area Number |
15K16482
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
稲葉 優希 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, その他部局等, 研究員 (30709431)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 動作解析 / バスケットボール / シュート / ボールの回転 / ボールの軌道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はバスケットボールのシュート動作をバイオメカニクス・運動制御研究の知見、及び現場のコーチの観点から多角的に評価して、試合中のシュート成功率を高められる“良い”シュート動作を明らかにし、日本のバスケットボール競技力向上に貢献することであった。シュートの成功率を高められる軌道やボールの回転の特徴を明らかにするために、平成27年度は様々なレベルのバスケットボール選手(ナショナルレベル、大学生、高校生)のシュート動作の動作解析を実施する計画であった。そこで、初年度はシュートの軌道や回転数、全身の動きが確実に測定できる手法を確立するために、予備実験を繰り返し実施し、測定の手法を確立した。市販のセンサー内蔵バスケットボールによって算出された回転数を光学式3次元動作解析システムで得たデータから算出した回転数や、ハイスピードカメラ映像を基に算出した回転数とを比較した。その結果、センサー内臓ボールを使用して非常に高い精度でボールの回転数を測定することが可能であることが明らかになった。一方、センサー内蔵バスケットボールは、ボールの軌道を算出することが出来ないため、光学式3次元動作解析システムを用いてボールの軌道と全身の動きを測定する必要があった。スリーポイントシュートのように長い距離の測定では、限られたカメラの台数で前動作範囲を測定することが非常に困難であった。しかし、繰り返し予備実験を実施して、カメラの設置位置や、ボールに貼付するマーカー及び解析方法を工夫することにより、身体及びボールの動作範囲全てを測定することが出来るようになった。そこで、昨年度はその手法を用いてナショナルチーム代表選手2名、大学生9名、高校バスケットボール部所属選手11名に対して動作解析を実施した。今後、データの解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、「シュート1投の成功率を高める動作」を明らかにするために、様々なレベルの被験者に対して動作解析を実施し、解析まで終了する予定であったが、予定をしていた全てのレベルの被験者に対する測定と、解析を終えることはできなかった。予定では、ナショナルレベルの選手、大学生、高校生、中学生各10名程度測定を実施する予定であったが、今年度は、ナショナルレベルの選手2名、大学生10名、高校生11名の測定にとどまり、中学生に関しては測定が実施できなかった。これは、測定方法の確立に時間を要したことが一番の要因であった。しかし、予備実験を繰り返し実施した結果、ボールの回転数はセンサー内蔵ボールを用いて簡単に、かつ高い精度で測定できることが明らかになり、また、ボールの軌道及び全身の動きに関しても、3次元動作解析システムを用いて広範囲の測定ができるようになった。 今年度確立した方法を用いて、上記の被験者がゴールからの距離が異なる3条件でシュートを打った際のボールの軌道や回転数、全身の動きを記録した。各距離から50本シュートを打ってもらい、バラつきに関しても観察できるような条件とした。さらに、回転を多くするように意識した条件とボールの軌道を高くするように意識した条件を加えて、それぞれに貢献する身体の動きについて検討するためのデータを取得した。現在、取得したデータを解析中であり、来年度は今年度得られたデータの解析結果を基に、新たに実験を実施していく予定である。今年度確立した方法を用いて、来年度は今年度よりも早いペースで測定と解析が実施できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、今年度実施した測定方法を用いて、中学生とナショナルチームレベルの選手の測定を実施し、今年度測定したデータとあわせて解析を進める予定である。解析に際しては、シュートにおけるボールの軌道(速度や投射角度、投射位置等)やボールの回転数といった、ボールに関するパラメータと、シュートにおける全身の動きをバイオメカニクス的に解析し、それらの関係を検証することによって、ボールの挙動に影響を及ぼす動きについて明らかにする。 また、来年度はシュート動作の制御に関する知見を得るために、Uncontrolled Manifold解析を用いて関節間の協調に関する解析を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、実験を開始してみたところ、実験方法に問題があり、再度測定方法を改善する必要があったため、本実験を開始する以前に予備実験を入念に実施した。そのため、当初予定していたよりも本実験の開始が遅れて、予定したよりも少ない被検者数での実験となったため、人件費・謝金及び物品費が減額し、次年度使用額が発生した。しかし、今年度実施できなかった実験に関して、次年度の実施を計画しているため、次年度使用額が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度実施する実験のために、被験者及び実験協力者への謝金を支出する予定である。 また、今年度実験を実施した結果、ボールが跳ね返り測定機器に当たる事象が頻繁に起きたため、それらを保護するためのネットや衝立を準備する必要があり、物品の購入が必要である。
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