2016 Fiscal Year Research-status Report
冬眠動物における骨格筋萎縮耐性メカニズムの解明とサルコペニア対策への応用
Project/Area Number |
15K16499
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中尾 玲子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (20582696)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ケトン体食 / 熱産生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、冬眠動物(シリアンハムスター)と非冬眠動物(マウス)に対して飢餓状態を模倣するとともに低体温を誘導する高脂肪・低炭水化物食(ケトン体食)を摂取させ、骨格筋への影響を分子レベルで比較することにより、冬眠動物特異的な筋量維持メカニズムの解明を目指す。 初年度の試験において、ケトン体食摂取による体温低下の経日変動にマウス、ハムスター間で違いが見られたため、ケトン体食摂取中の体温調節機構に着目し、骨格筋特異的に発現する日周発現遺伝子Slc25a25の熱産生機能と発現制御機構について解析を行った。SLC25A25はミトコンドリアに発現するATPトランスポーターである。Slc25a25遺伝子の発現は活動開始時間帯をピークとする顕著な日内リズムを示したが、その日内リズムはClock変異マウス、Bmal1欠損マウス、坐骨神経を切除したマウスにおいて消失した。このため、Slc25a25遺伝子は体内時計と神経系のシグナルを介して日周発現すると考えられた。次に、Slc25a25分子と体温調節との関与について検討した。Slc25a25遺伝子はケトン体食負荷によって発現が誘導されたが、坐骨神経切除によって発現誘導は消失した。熱産生臓器として知られる褐色脂肪組織におけるSlc25a25遺伝子、Ucp1遺伝子の発現量にはケトン体食や坐骨神経切除の影響が見られなかった。このとき、坐骨神経を切除しケトン体食を摂取したマウスの体温は、対照マウスと比較して、暗期の体温が顕著に低下した。これらの結果から、飢餓時の体温調節には骨格筋による熱産生が必要であり、体内時計や神経系によって発現量が制御されるSlc25a25遺伝子が寄与する可能性が示された。この成果はScientific Reports誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
筋量制御遺伝子の発現量を解析したものの、PCR増幅効率改善など実験条件の調整が必要になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に検討を行った筋量制御遺伝子発現量の違いのメカニズムに言及できるデータをとるためにDNAマイクロアレイ解析を実施するとともに、ケトン体食摂取中のマウスとハムスターの筋の形態の違いを解析する。
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Causes of Carryover |
予定していた骨格筋のDNAマイクロアレイ解析を行わず、昨年度に購入した試薬を用いた解析を中心に実施したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通り、筋重量調節機構に係る分子生物学的、形態学的解析に必要な試薬の購入に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)