2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16723
|
Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
大村 和人 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (80431881)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 南朝梁時代 / 艶詩 / 蕭綱 / 内人 / 内外の弁別 / 家族の幸福 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に取り組んだのは、南朝時代の「内人」詩である。 南朝斉梁時代の艶詩には、「内人」が登場する作品が急増した。南朝梁・簡文帝蕭綱の「詠内人晝眠」は、梁代艶詩の中でも特に軽薄と評されたが、この作品の主人公も「内人」である。「内人」という語の意味は「身内」、「妻妾」、「宮女」の三種に分類できるが、この作品では彼女の夫である語り手が彼女と同伴する幸せを読者に誇示する特徴を見出すことができ、この「内人」は「妻妾」を指すことになる。 梁代の「内人」詩は主に蕭綱とその文学集団の詩人たちによって制作されたが、それらの作品にはどのような特徴が見られるのか。また、梁代艶詩に妻妾が登場することは珍しくないが、その場合、別の呼称で呼ばれることも少なくない。それらの作品と「内人」を詠った作品とではどのような相違があるのか。更に、妻妾以外の女性を詠った作品と比較した場合、どのようなことが見えてくるのか。 これらの問題について考察した結果、以下の内容が明らかになった。「内人」詩は男性と「内人」の小世界の「内」と「外」を弁別し、「外」へも視線を向け、そうすることによって男性と「内人」の幸福をより際立たせるという共通点を有する。これに対して、妻妾が登場するものの他の呼称で呼ばれる作品では視点が内向きであり、外への視線は見られない。妻妾以外の女性を題材とした作品では、語り手が美女をあくまで描写の対象として取り扱い、彼女と幸福を共有せず、彼らの間に一定の距離があるかの如く描写され、やはり外への視線を見出すことはできない。 斉梁時代には家族の幸福を象徴的に描く作品の制作が流行し、「内人」詩もその当時の文学の風潮と軌を同じくするものであったと位置づけられるが、右の特徴に別の作品群とは異なる新味を認めることができ、蕭綱たちが「内人」詩を制作した意味を見出すことができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は、2016年6月18日に開かれた六朝学術学会第20回大会で口頭発表した。そして、質疑応答で提出された意見も取り入れ、発表内容をまとめた論文を収録した、六朝学術学会『六朝学術学会報』第18集が近日中に刊行される予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の平成28年度の研究の成果を踏まえ、本研究の第3年度となる平成29年度には、三月三日の伝統行事の場において、即興で制作された「率爾」詩を取り上げる。三月三日の伝統行事といえば日本でも現在に到るまで行われ続けている曲水宴が有名で、それを題材とした詩歌として、東晋時代の蘭亭詩や『文選』収録の公讌詩が人々に知られる。斉梁時代にはこれらとは別に三月三日「率爾」詩が制作された。「率爾」は「いきなり」「急に」という意味である。この題名を持つ作品は女性にかなりの紙幅を費やして言及される点において、艶詩にも分類できる。また、梁代までの艶詩のアンソロジーである『玉台新詠』にも「率爾」という語を題名に持つ艶詩が数多く収録されている。今年度はこれらの「率爾」詩に見える特徴を多面的に分析し、斉梁艶詩の実際の内容の一端を探る手がかりを得たい。
|
Causes of Carryover |
交通費の計算において想定外の差額が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該助成金は、翌年度、物品費として使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)