2016 Fiscal Year Research-status Report
日本社会党による国会質問の実証研究─楢崎弥之助文書の分析を中心として─
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15K16823
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
篠原 新 岐阜大学, 教育推進・学生支援機構, 准教授 (80608927)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本社会党 / 国会質問 / 55年体制 / 自由民主党 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は第2年度として、昨年度から引き続き文書・資料の収集及びそれらの補修に加えて、番号付けと年代順整理及び議事録等との照合に取り組んだ。 この過程で、楢崎が直接、国会で質問はしていないものの、社会党の教育政策についても資料を収集していたことが明らかとなった。楢崎は大学における研究と軍事との関係を問題視し、こうしたことを防ぐために学校制度を「民主化」することにも強い関心を有していた。そこで、当時の社会党の教育政策について調査した。そして、1967年に社会党が現行の6・3・3・4制を4・5・5・4制へと改革することを主張していたこと、そして、この改革案が日教組の強い反対により挫折に至った政治過程を検証した論文を発表した。 また、2016年9月7日には、村山富市元内閣総理大臣に楢崎弥之助氏や国会質問について直接、インタビューを行う機会を得た。これにより、村山と楢崎が同じ九州出身ということで強い人間的なつながりがあったことが分かった。また、楢崎が社会党を離党する過程などについても証言を得ることができた。今後このインタビューも貴重な資料として残すことを考えている。 加えて、JICAでの外国人若手官僚向けの講演(2016年10月21日)で、日本政治について講義を行った際には、日本の与野党対立についても説明した。その際に、55年体制下での代表的な野党の論客として楢崎を上げ、彼が追及した代表的な疑惑とその帰結について概説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第2年度である2016年度は、文書・資料の収集及びそれらの補修に加えて、番号付けと年代順整理及び議事録等との照合を計画していた。 このうち昨年度から続けている文書・資料の収集及びそれらの補修については概ね順調に進んでいる。ただし、楢崎の直筆で書かれた文字が薄くなっている場合が多いため、画像コピーでは判読しにくい部分が多くあることがわかった。その部分については、実物を目視して読み取った内容をテキストデータとして記録することにしたため、その作業が残されている。 番号付けと年代順整理及び議事録等との照合についてはやや遅れている。理由としては、2017年度から所属機関を異動することになったため、その準備等で十分な時間が取れなかったことが挙げられる。そのほか、楢崎が残した文書には、結果として国会で質問するには至らなかった資料が多く、こうした資料の整理に難航していることも理由の一つである。また、楢崎は類似した質問を角度を変えて何度も行っていることが多く、このような形式の質問に用いた資料を、議事録と照合した形で整理することが難しく、対処方法を検討中である。そのほか、国会質問とは直接的な関係は薄いが、楢崎が強く批判していた社会主義協会に関する資料も多くあることが分かった。これらの資料も重要であり、今後、読解と分類を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、番号付けと年代順整理及び議事録等との照合を行ったのち、目録を作成する予定である。文書・資料の番号付けと年代順整理については、すでに着手しておりこれを進めることにする。これまでの調査により、国会質問には生かされなかった資料も多くあることが分かったが、これらの資料も整理する予定である。ただし、資料が多くあるため、まずは楢崎が最も活発に活動していた予算委員在任中(1968年―1977年)のものから整理する予定である。 その後、仮目録を基に楢崎の国会質問の内容を把握し、どの質問の際にどの資料を用いたのかが把握できる目録を作成する作業に取り組む予定である。楢崎は、類似する質問や関連する質問を繰り返し行っているため、このことが把握できるような目録になるように作業を進めたい。 そのほか、今年度行った村山富市元首相へのインタビューも継続して行い、社会党内で楢崎の国会質問がどのように受け止められてきたのかなどを調査する予定である。また、村山以外にも楢崎を知る人物が多くいることが分かったため、こうした人々にも楢崎についてのインタビューを行い、楢崎による国会質問が社会党内外でどのような影響を与えていたのかについても検証したい。
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Causes of Carryover |
2016年度には、福岡県に複数回出張し、楢崎に関係する資料収集や当時を知る人へのインタビューなどを行った。また、大分県にも出張し、村山富市元首相へのインタビューを行った。しかし、2017年度から所属先を異動することになったため、その準備等があり、とくに2016年度後半には十分な時間を捻出することができなかった。そのため、旅費や物品費に未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には、2016年度に積み残した作業に取り組むほか、目録作りのための資料整理を行う予定としている。そのために文書や資料の保管・整理用物品を購入することにしている。また、楢崎を知る人々へのインタビューも行う予定であり、本年度未使用額を含めて、次年度の研究費を計画通りに使用することにしている。
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Research Products
(2 results)