2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16845
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 新也 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (00713538)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近世ベトナム史 / 村落史 / 地方文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
夏期にベトナム・トゥアティエンフエ省フーヴァン県のフオンフォン社・クアンタイン社・クアンアン社内の各集落内にある亭(ディン)、族祠堂、寺院などにおいて漢文・チュノム文書の調査を行った。族祠堂において収集できた漢文家譜はほとんどが十九世紀以降の比較的あたらしいものであり、一族の始祖の姓名や忌日、現在に至るまでの世代数はほとんどが不明である。調査地域がキン族王朝の支配下に入ったのはおおむね十六世紀以降であることから、この地域のキン族はほとんどがこれ以降にゲアン以北から移住したものと推測されるが、多くの一族では始祖の出身地は不明である。始祖をタインホア出身とする一族も多いが、これは若干ステレオタイプ化された言説である印象を受け、真偽のほどは定かではない。十九世紀以降の移住に関しては比較的明瞭な記録や記憶が残されている。家譜の編纂状況も考慮すると、調査地域で儒教的意識を持つ父系親族集団が明瞭に成立したのは概ね十九世紀以降であると、現時点では推測される。 またいくつかの集落の亭には十八世紀以降の地方行政関連の史料も保存されてていることがわかり、これらも撮影した。特にラグーン近傍のヴァンクアットドン集落では十九世紀の水利・漁業権関連の公文書が保管されており、これは今後のタムザンラグーンにおけるグエン朝の水面管理を知るうえで重要な資料であると考えられる。 この他、シンガポールの国際瓦解(AAWH)において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地域には多くの18~19世紀の漢字・チュノム文書が集落内に現存していることが分かり、これはほぼ予想通りである。現地の地方幹部の積極的な協力もあり、多くの史料を撮影することができ、聞き取り調査にも積極的に協力してくれた。今後の調査も円滑に進められると予想される。史料が多すぎ、限られた日数では全ての撮影は困難なのが、若干問題である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き現地での史料収集を継続する。また撮影した史料を整理し、目録を作成する。
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