2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16845
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 新也 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (00713538)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近世ベトナム / 村落史 / 村落文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度にベトナム中部のフエ周辺域で収集した漢字・チュノム史料の整理、サマリーの作成を行った。その過程で、多くの興味深い事実が判明した。 ベトナム北部の伝統集落で村落運営における中心的役割を果たしていた「亭(ディン)」と呼ばれる施設は、フエ周辺域でもほぼすべての集落に存在している。亭に現存している史料群は土地台帳・人丁簿・納税関連文書といった行政関連の文書が中心となっており、フエ周辺域でも村落行政の中心的施設であったことを窺わせる。しかし集落内に存在する各神位に授与される「勅封」と呼ばれる史料群を検討すると、紅河デルタを中心としたベトナム北部の村落に比較するとフエ周辺域の集落に存在する亭は信仰面では非常に貧弱な印象を受ける。一般的に亭に祀られている神位は「タインホアン」と総称されるが、ベトナム北部の場合、これらの神位は「~~之神」といった固有名称があるのに対し、フエ周辺域の集落では亭には単に「タインホアン」を祀っている、というだけで固有の名称すら与えられていない場合すらある。 これらを見る限りフエ周辺の集落における亭は行政的中心であったのは間違いないが、祀られている神位はとってつけたような雰囲気があり、信仰面では「箱ものだけ」という印象がある。一方で各氏族の始祖は同時に開耕神とされ、亭に祀られているケースも多い。紅河デルタに比べると血縁集団の勢力は遥かに強い印象を受ける。これらを見る限り、フエ周辺域の亭は、村人の信仰にもとづいて自発的に建設されたものというよりは、19世紀の阮朝期以降に行政側の主導により整備されていった可能性が強い。以上の考察は本年度に学習院大学におけるシンポジウムにおいて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、民間企業において技能実習の生受け入れ事業に従事しているため、ベトナム・フエにおけるさらなる史料の収集を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
勤務先企業における有給の取得とベトナム・フエ周辺域におけるさらなる史料収集。
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Causes of Carryover |
本年度は勤務先企業の業務多忙につき有給の取得が困難であったため、海外での調査を行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、有給を取得しフエでの村落調査を実施する予定。また現在、作成している「Tong tap thac ban van khac Han Nom」の索引を科研報告書にて印刷する予定。
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Research Products
(2 results)