2018 Fiscal Year Annual Research Report
Religious Conflict in the Early Modern Holy Roman Empire. Research about functions of 'Reichsverfassung' in the Multiconfessional Society.
Project/Area Number |
15K16854
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
鍵和田 賢 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (70723716)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宗派対立とその解決 / 宗教的寛容 / 神聖ローマ帝国における紛争解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、異なる信仰集団同士が、紛争を経つつもいかにして「共存」のシステムを構築していったのかを、近世神聖ローマ帝国の都市ケルンを対象に明らかにしていくものであった。H29年度より18世紀初頭に生じた「居留民条令問題」を題材に研究を進めているが、H30年度も引き続き同問題に関わる研究を継続した。 「居留民条令問題」とは、1714年にケルン都市参事会が公布した「居留民条令」がケルンのプロテスタント住民の経済活動を大幅に制限する内容を含んでおり、反発したプロテスタント住民による帝国裁判所への告訴を経て最終的に帝国レベルの政治問題へと発展したものである。この事件の分析を通じて、個別地域の宗派紛争当事者が宗派関連の帝国法をどのように解釈・運用したのか、帝国機関は個別地域の宗派紛争にどのように介入したのか、個別地域の宗派紛争が帝国政治へどのような影響を与えたのかを明らかにすることを目指した。 H29年度までの調査により、「居留民条令」をめぐる訴訟の概要、および原告であるプロテスタント住民側がこの問題を「宗派問題化」することで闘争を優位に運ぼうとする戦略を取っていたことが明らかになった。H30年度は、未だ未解明だった都市参事会側の闘争戦略および帝国法の解釈・運用を明らかにすることを目指した。 都市参事会が作成した、原告の主張に対する反論文書を分析した結果、参事会側も原告側と同様に主張の法的根拠となるヴェストファーレン講和条約の条文に対して自由な解釈を加えていたことが明らかになった。これは、同条約の規定の解釈に関して未だ未確定な部分が多く存在し、多様な解釈を加える余地があったことを示している。また、帝国機関による紛争調整機能については限定的だったこと、しかし帝国機関を用いた闘争は当該紛争を帝国レベルで可視化させ、結果的に当事者間による妥協を促進した可能性があることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)