2017 Fiscal Year Research-status Report
旧体制末期パリの『悪しき言説』への取り組みに見るポリスの実践とその変容
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15K16857
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松本 礼子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特任講師 (60732328)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近世フランス / ポリス / パリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、旧体制末期のパリにおいて、民衆を含めた住民による反王権的な言動一般(「悪しき言説」)に着目し、都市統治全般を意味するとともに秩序維持を担う「ポリス」との関連においてそれらを分析し、これまでの世論研究では捉えきれなかった旧体制末期の政治文化の変容を包括的に解明することを目標としている。既存の権力行使のあり方に対する異議申し立てが、あらゆる社会層において顕著になる1760年代以降において、「悪しき言説」へのポリスの取り組みがいかなる変容を迫られたのかを解明し、旧体制末期の社会と文化の理解に新しい光を当てることを課題とする。 研究代表者は、平成27年度および平成28年度にフランス国立図書館および国立文書館で「悪しき言説」をめぐる事例の資料発掘と収集を行い、国立図書館・アルスナル分館所蔵の「バスティーユ文書」コレクションからコーパスを確定しているが、平成29年度の第一四半期は、平成28年度に引き続き、特に現場のポリス担当官の報告書や、彼らを統括する警視総監との書簡の精読を主として行い、18世紀後半に固有の都市統治の技術を明らかにすることに注力した。その成果を平成29年5月に開催された『社会経済史学会』第86回全国大会で報告し、そこで得たフィードバックを反映させた論文が、平成29年12月に公刊された論集『地域と歴史学―その担い手と実践』に収録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では上記の課題を解明するにあたり、以下の3つの段階を設定している。1.「悪しき言説」と見なされた事例の総合的把握、2.ポリスの「悪しき言説」をめぐる政策の解明、3.個別事例におけるポリスの取り組み、実践の解明。 このうち、1.については既に平成27年度にコーパスを確定済みであり、2.と3.については平成28年度の夏期休業期間中の現地調査で、フランス国立図書館・アルスナル文館に所蔵されている現場のポリス担当官の業務報告書を中心に発掘、収集済みであったので、平成29年度の第一四半期はこれら史料の解読と分析を行った。本研究課題は当初、平成27年度から平成29年度までの3年で遂行する予定であったが、研究代表者の出産・育児により、平成29年度の夏期休業期間前に研究活動を一旦中断することとなった。平成29年度は本研究課題の最終年度であったため、収集済みの史料の解読と分析を完了した上で、3年間の研究成果の取りまとめを行う予定だったが、上述の理由で延期となった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き平成28年度の海外調査で収集した個別事例に関する史料の精読と分析を進める。3.の個別事例については比較に十分な事例数を見込んでいるので、既存の統治構造に対する民衆層を含むパリ住民の認識のあり方やその変容といった視点からも研究成果を発表する予定である。 また、平成30年度は本研究課題の最終年度であるため、3年間の研究成果の還元に主眼を置く。具体的には研究成果の関連学会や研究会での報告や書籍の出版である。その際に、史料のより一層の拡充や再確認が必要となるため、平成30年度もフランス現地調査を行う。
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Causes of Carryover |
上述の通り、研究代表者の出産・育児により、平成29年度に予定されていた史料の最終確認のための現地調査を遂行することが出来なかったため、平成30年度の夏期休業期間中に行うこととする。 平成30年度の研究費の主たる使用目的は、1. 海外調査のための渡航費・滞在費 2.文献・資料の購入 3.第一次史料のデータ化・PDF化 である。
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