2016 Fiscal Year Research-status Report
20世紀中頃アメリカの都市住宅問題と公民権運動の歴史学的研究
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15K16858
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
武井 寛 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 講師 (10707368)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人種 / 公民権運動 / 都市史 / 住宅政策 / 移民 / ジェンダー / エスニシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間の研究プロジェクトの2年目にあたる平成28年度は、公民権運動家と住宅改革家の接点を明らかにするために、主に連邦住宅局(Federal Housing Authority)の史料を収集と、シカゴにおける公民権運動の事例を検討した。前半の4月から7月は当初の計画通り、アメリカのメリーランド州にある国立公文書館で平成27年度に収集した連邦住宅局と住宅都市開発省(Department of Housing and Urban Development)のコレクションを中心に分析を行った。また、5月には第66回日本西洋史学会において、制限的不動産約款を用いた住宅に関する人種排除の禁止を命じた連邦最高裁判所の判決の歴史的意義を考察した内容の発表を行った。8月には平成27年度と同様に、メリーラント州にある国立公文書館で住宅関連の史料を中心に収集した。平成28年度後半には、夏に収集した史料の分析を行うと共に、名古屋アメリカ研究会より研究報告を依頼されたため、本年度取り組んでいたシカゴの公民権運動を発展させ、「住宅開放とは何を意味していたのか?-都市住宅史としてのシカゴ自由運動-」と題した発表を平成29年1月に行った。本発表をもとに論文を執筆し、平成29年2月に「シカゴ自由運動再考(上)-運動の組織化からブラック・パワーの台頭まで-」というタイトルで『岐阜聖徳学園大学紀要<外国語学部編>』第56集に投稿し、掲載された。さらに、本研究プロジェクトとも関連するシカゴに注目しながら、アメリカにおけるナショナリズムの歴史的展開を分析した著書を刊行した、大阪大学の中野耕太郎氏の著書『20世紀アメリカ国民秩序の形成』(名古屋大学出版会、2015年)を、日本アメリカ学会編『アメリカ学会会報』No.192(2016年11月30日)で紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要文献の収集と、本研究プロジェクトにおいて最も重要なアメリカでの現地調査を予定通りに行えた。特に国立公文書館における住宅関連の史料は、平成27年度の調査で取りこぼしたものを平成28年度に収集することができたので、今後はこれらの史料の分析を通して研究をさらに進めていきたい。 研究成果の発表という面では、学会・研究会発表を2回行い、投稿論文を1本発表することができた。ただし、西洋史学会で発表した、制限的不動産約款を用いた住宅に関する人種排除の禁止を命じた連邦最高裁判所の判決の歴史的意義を考察した内容については論文化できなかったため、これは平成29年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、公民権運動団体が公正な住宅を公民権と捉えて活動を始めた過程を明らかにするために、NAACPで活躍した弁護士の史料とまだ調査する必要のある住宅活動家の史料を収集し、分析を行う。4月から7月はこれまで収集してきた一次史料の分析を集中的に行う。これと並行して、平成28年度に西洋史学会で発表した内容である、制限的不動産約款に関する論文を執筆する。8月にはカリフォルニア大学バークレー校での史料調査を行う。カリフォルニア大学バークレー校では、バンクロフト図書館に所蔵されている20世紀前半の住宅改革に尽力したキャサリン・バウワー・ウースター・ペーパーを収集する。本史料は過去(平成26年度「研究活動スタート支援」)にも調査を行ったが、膨大なコレクションのため平成29年度も引き続き調査を行う。サンフランシスコとロスアンゼルスの公民権運動団体の史料としては、NAACP南西部地区の史料を収集する。 9月から12月にかけては、今回アメリカで収集した史料の分析及び論文の執筆に着手する。平成29年度の重点課題である公民権運動団体が公正な住宅を公民権と捉えて活動を始めた過程に関する分析は、これまでよりも長い時間軸で分析を行う必要があるため、平成29年度末までに初稿を完成させることを目指す。
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Research Products
(4 results)