2015 Fiscal Year Research-status Report
海外戦没者の遺骨収容活動に関する人類学的研究:戦没者と多様な生者の関係に注目して
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15K16900
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
深田 淳太郎 三重大学, 人文学部, 准教授 (70643104)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺骨収集 / 慰霊 / 太平洋戦争 / 発掘 / 計量 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画初年度となる本年度は、太平洋戦争の戦没者に関する慰霊および遺骨収集活動に関する文献収集を行うと共に、遺骨収集ボランティアグループAの活動について参与調査を実施した。 Aグループは8月末-9月末にかけてソロモン諸島ガダルカナル島の山中において遺骨収容活動を実施したが、その準備として4月から月に1-2回程度、東京都台東区にて会合を実施した。研究代表者は、その準備段階の会合からガダルカナル島での活動まで、すべての過程において参与観察を行なった。 日本国内の準備段階では、①Aグループの理念や行動原則がどのようにメンバー間で共有され、また更新されていくのかについて、②僧侶や神職などの宗教者であるメンバーが、死者あるいは遺骨をそれぞれどのように捉え、異なる宗教の間で、当座の共通理解を形作っていくのかについて、③大学生などの若年層が、どのような経緯で新たに遺骨収容活動に参加するようになったのかについて、ミーティングでのさまざまな議論や会話の中で、また適宜実施したインタビューを通して明らかにした。 ガダルカナル島山中での遺骨収容活動においては、①日本人メンバーと、現地で作業を手伝うソロモン人メンバーの間で、遺骨についての認識のどのような齟齬があるのか、②Aグループのメンバーと、厚生労働省の応急派遣団のメンバーの間で遺骨についてどのような認識の違いがあるのか、という二点に特に注目して、実際の現場での遺骨の取り扱いや、遺骨についての語りのデータ収集を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の職場に赴任した初年度であったため、新たな環境に慣れ、研究をはじめる体制が整うまで若干の時間を要した。しかし、調査対象のボランティアグループAとの関係は三年目になるため、半ば内部の人間としてさまざまな情報をスムーズに入手することが出来るようになり、計画していた事項についてはおおむねデータを収集することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度より遺骨収集活動についての新たな法律「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」が施行されている。この法律では、海外での遺骨収集を今後9年間で集中的に推進していくということが目指されている。この推進のために民間のボランティア団体も重要な役割を果たすことが期待されており、本研究で調査対象としているAグループもその協力団体として、厚労省などとすでに連絡を取りあって活動を進めつつある段階である。 こういった状況を鑑み、今後は遺骨収容活動が「国の政策」として実施される中で、これまで完全なボランティアで実施されていた活動が、どのような点で変わっていくのかという点について注目して調査を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)