2017 Fiscal Year Research-status Report
海外戦没者の遺骨収容活動に関する人類学的研究:戦没者と多様な生者の関係に注目して
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15K16900
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
深田 淳太郎 三重大学, 人文学部, 准教授 (70643104)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 戦没者 / 遺骨収容 / ボランティア / DNA鑑定 / 人格 / ガダルカナル島 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソロモン諸島ガダルカナル島における遺骨収容ボランティア団体の具体的な活動および遺骨収容活動を取り巻く歴史的状況の変遷および現在の社会状況について、フィールドワークと文献調査の両面から取り組んだ。 ①フィールドワークについては、当初は当該ボランティア団体によるガダルカナル島での遺骨収容活動について調査する予定であったが、関連団体との兼ね合いから2017年度は派遣活動を実施しなかったため、国内における同団体の会合や訓練活動について調査をおこなった。 ②文献研究においては、文化人類学における人間観念についての先行研究を読み込み、物質としての人間の身体あるいは死体と、その人間の人格とがどのように結びつけられるのかについて整理し、その上で昨年度までのフィールドデータとどのように結び付けられるのかを考察した。 特に注目したのは、具体的な物質としての遺骨の取り扱いと、概念としての遺骨あるいは戦没者の取り扱いの関係についてである。概念としての戦没者あるいは遺骨は、遺族からすれば特定の顔を持った個人であるが、収容を推進する立場からするとそれは「〇柱のご遺骨」という数え上げる数量的存在であり、また直接的な関係をもたない人々からすれば「〇〇で亡くなった戦没者」という個人というよりは集合的な存在である。このような概念としての戦没者は、単に概念として宙に存在するわけではなく、たとえば千鳥ヶ淵戦没者霊園で個々人が区別されずに〇〇方面の〇柱として安置されている遺骨として、あるいは遺骨収容の現場でボランティアによって拾い上げられる骨片として、あるいはDNA鑑定によって抽出された遺伝子情報として存在していることを明らかにした。また、これらの具体的なモノとしての戦没者は、特定の宗教的な規範や、国内外の法律や、DNA鑑定のような新たな科学技術によって、特定の形に整えられ、形作られているものであることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度に予定していたガダルカナル島での遺骨収容活動が実施されず、当地の地権者や発掘協力者との関係性について調査しようと考えていた計画を遂行することができなかった。そのため使用する予定であった予算を一部2018年度に実施予定の調査のために残した。 フィールドワークを実施できなかった分、文献調査を進めることができた。遺骨を特定の個人として捉えるのか、それとも集合的な存在として捉えるのかという点について、文化人類学、歴史学、民族学の観点から考察した資料を読み進め、考察を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は夏期にガダルカナル島での遺骨収容活動でのフィールドワークを、また場合によっては秋期にパプアニューギニアのブーゲンヴィル島での遺骨収容活動のフィールドワークを実施する予定である。これらのフィールドワークを踏まえて、さまざまな制度や社会的状況の中で作り上げられている遺骨収容活動を通して、死者が現代の日本に暮らす人々にとって、そして遺骨がある現地において、どのような形の死者としてあらわれでてくるのかを考察していきたい。成果は論文としてまとめ、「国立民族学博物館研究紀要」「文化人類学」などに発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
調査対象である遺骨収集ボランティア団体が2017年度にガダルカナル島での遺骨収容活動を実施しなかったため、予定していた旅費を使わなかった。2017年度使わなかった分の旅費を、2018年度のフィールドワークで使用する予定である。
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Research Products
(2 results)