2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・ジャスティス運動による規範形成とソーシャル・ネットワークに関する研究
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15K17003
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
五野井 郁夫 高千穂大学, 経営学部, 教授 (50586310)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 参加民主主義 / サイバー・スペース / グローバル市民社会 / グローバル・ジャスティス運動 / 国際規範 / ソーシャル・ネットワーク / 非暴力 / グローバル・デモクラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、グローバル市民社会論とグローバル・ジャスティス運動の理論枠組みの全体像を把握させるべく、類縁集団ベースでのグローバル・ジャスティス運動の生成と伝播過程を歴史的・理論的な双方の視座を深めるとともに、イスタンブールでのタクシム広場等の民主化運動の現地調査にも成功し、多くの成果を上げた。くわえて史料収集とフィールドワーク、データの解析を行うことができた。 一連の研究と各地の定点観測をするなかで、各国の議会制民主主義とは別の民主主義の回路が生起しており、これらの潮流が、各国レベルでの民主主義の奪還、反緊縮の政治、反差別まで、国境や地域を越えたグローバル・ジャスティス運動という現象として表出しつつある点が浮かび上がってきた。また、これらのフォーマットについては、方法論から美的な次元まで、人的交流のみならず、ソーシャルネットワークを通じて伝播していることを、香港や台湾、トルコ、日本などの各事例横断的な非暴力等のレパートリーから確認しつつある。 また研究成果の一部については『レヴァイアサン』をはじめ数多くの学術雑誌等で公表した。さらに英国国際政治学会、NPO学会でも報告等を行う機会を得た。それととともに、各種新聞メディア、NHKやTBS等のテレビ報道番組や講演会等でも公表し、アウトリーチにもつとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成27年度は当初の計画以上に研究が進展した。対象分野の先行研究を渉猟しつつ、類縁集団の動態把握のための資料収集とフィールドワークを行い、国際美術展の定点観測によって展示によって表現されているイシューやレパートリー、そして美的次元における争点化の潮流について継続的な把握につとめ、とくにヴェネツィア・ビエンナーレでのアルセナーレ会場の展示や各国の展示等で、グローバル・ジャスティス運動の展開の中で使用されるさまざまなスローガンや言説が、シニフィアンとして作品化されていることを確認した。 またイスタンブールでのタクシム広場等の民主化運動のフィールドワークのさい現地調査の中で参加者らへのインタビュー調査にも成功した。さらに同運動やアラブの春以降のコラテラルに生じた様々な参加民主主義的な契機が、地中海地域のみならずソーシャルメディアを通じてグローバルに与えた影響についての手がかりを得た。 さらにこれらの様々な言説の可視化たるソーシャル・メディアのハッシュタグ等を活用したハッシュタグ・アクティヴィズムについて、テキストマイニングとビッグデータ分析を行うことで、同運動の担い手たる類縁集団からなるグローバル市民社会による国際規範の生成ならびに国境・ネット横断的伝播の理論化につとめた。これらの成果は引き続き017年度に様々な形で公表予定である。 くわえて英国国際政治学会(BISA)の創設40周年記念大会に招待されクローズドのワークショップセッションや日本NPO学会で成果の一部を公表する機会を得るとともに、雑誌への論文投稿や書籍への論文掲載という形で、初年度から研究計画で示した研究内容を広く江湖に問うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度はJ. Smith & D. Wiest, Social Movements in the World-System: The Politics of Crisis and Transformation (2012)が見落としているグローバル・ジャスティス運動の文化的特性につき、W. Bradley & C. Esche, Art and Social Change(2008)やN. Klein, No Logo, new ed.(2009)、Hardt & Negri, Declaration(2012)に散発的に見られるデジタル・カルチャーと芸術表現を用いた非暴力的な規範変容的文化からなる「ポスト-新しい社会運動」(S. Hall, 1999)のグローバルな展開ならびにフォーマット伝播の理論化とフィールドワーク、史料収集をグローバル・ジャスティス運動の現場で行う。
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Causes of Carryover |
購入予定の物品の発売ならびに書籍と資料の刊行が遅れたため、使用を見送らざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度が2015年度に予算額が少ないため、使用差額を次年度の使用計画にて補強的に使用する。
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Research Products
(18 results)