2015 Fiscal Year Research-status Report
データ研磨技術を用いた選択集合からの潜在ニーズの発見
Project/Area Number |
15K17146
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
中原 孝信 専修大学, 商学部, 講師 (60553089)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 考慮集合 / データ研磨 / 消費者行動 / 推薦システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、消費者の商品選択のプロセスとして考慮集合の概念を取り入れ、消費者同士の購入 商品から購入直前に考慮された商品群を表す考慮集合を予測し、それを潜在ニーズとして捉える方法を提案する。そして新たな消費者行動モデルを構築し、潜在ニーズを利用した実証研究から有効性を明らかにする。 2015年度は、考慮集合を予測するためにグラフのリンク予測を応用した方法で、同時購入されやすい商品の共起関係と、ノードを入れ替えてもグラフ構造に変化がない性質である構造同値性を利用して、代替商品を見つけることで考慮集合を予測する方法を提案した。そして、その応用研究として、考慮集合を利用した推薦システムを構築した。 利用したデータは、無印良品のID-POSで230万人の中からECサイトと店舗を両方利用している顧客約1万人を対象に分析を実施した。両方を併用している顧客は全体の約6%であるが、店舗だけを利用している顧客に比べて売上金額が3倍程度大きく、併用顧客は当該企業にとって重要な顧客である。考慮集合を利用した推薦システムによってこれまでに店舗しか利用していない顧客をECサイトに誘導することが可能であり、計算実験の結果からは、他の手法と比べて提案手法の推薦精度が最も高くなることを示した。また、推薦された商品の中で顧客の購入を適切に予測できていた商品は代替商品が多く、リンク予測と構造同値性を扱った方法の効果を示すことができた。 これらの結果から得られた知見は、考慮集合を用いた潜在ニーズの特定には、重要な知見であり、今後も実証研究を積極的に実施しながらモデルの精緻化を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「1.潜在ニーズの概念定義と理論化」→「2.潜在ニーズのモデル化」→「3.応用可能性の検討」という大きく3つのフェーズに分けて研究を実施している。1年目は、「1.潜在ニーズの概念定義と理論化」に取り組んでおり、考慮集合の概念を利用した潜在ニーズの予測方法を構築し、その有用性を推薦システムによって検証した。結果として考慮集合の枠組みを利用した潜在ニーズによって推薦精度が向上した。このように潜在ニーズの概念を捉え実証研究で有用性を示すことができており、進捗は「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、実証研究の観点から最も時間の要する「2.潜在ニーズのモデル化」 に着手していく予定である。これまでにID-POSデータを解析し、消費者のマインドとして顧客の志向の違いから商品を購入する際に想起される店舗の違いを明らかにしてきた。そこでは、表層的な購買情報から想起される店舗を判別する技術として、ネットワークデータの粒子化技術を開発しており、「潜在ニーズのモデル化」にこの技術を応用する。そして実証研究を通じて、PDCサイクルからモデルを精緻化していく。実証研究で利用するデータについては、複数種類のデータを本研究に利用することが可能であり、顧客情報を一元的に管理したデータベースを構築し効率的に研究を行う。
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Causes of Carryover |
次年度では実証研究を中心に行うが、当初予定していたデータに加えて新たなデータの利用が可能になり、データのクリーニング等の作業をアルバイトを雇用して実施するため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由欄に記載したとおり、新たなデータのクリーニング作業をアルバイトを雇用して実施させていただく予定であり、人件費として使用させていただく。
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Research Products
(8 results)