2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 賢示 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (60734647)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移民 / 学力 / マルチレベルモデル / 同化仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、移民の社会経済的地位達成に関連する先行研究をレビューし、公開されているデータを用いた二次分析をおこなった。また、比較対象となるネイティブのキャリア移動についてパネル調査データを用いた実証分析をおこなった。 移民の地位達成に関する成書は欧米をフィールドとした実証研究を中心に蓄積がある。移民の子どもの学力形成に着目した研究も展開されており、特に出身世帯の社会経済的地位とホスト国言語の使用状況に着目したものが多い。日本における質的研究の蓄積を踏まえつつ、OECDが実施しているPISAデータを再構成し、移民の学力達成とその背景について研究をおこなった。 データ分析の結果、日本における高校1年生段階の生徒については、ネイティブと移民第二世代(本人が日本生まれ、両親のいずれかが外国生まれ)のあいだの学力差はみられず、ネイティブと移民第一世代(本人が外国生まれ、両親のいずれかが外国生まれ)の間に明確な学力差がみられた。そして、その学力差を生み出している主要な背景として、親の社会経済的地位と家庭で日本語を使用しているか否かに着目し、さらに検討をすすめた。その結果、社会経済的地位と学力の間には明確な正の関連がみられたが、ネイティブと移民の学力差を説明するものではなかった。学力差を説明したのは家庭での日本語使用状況であり、学力形成における言語的障壁が、ネイティブと移民の学力差の背景となっていることが明らかとなった。より厳密な因果関係の検証にはさらなるデータの蓄積が必要となるが、移民の生徒、親の双方にとって、日本社会、および教育システムに関する情報を得るために日本語を習得する機会が重要であるという示唆を得た。 ネイティブのキャリア移動については、失業リスクが高く、職場での経験が十分蓄積していない状況での転職において、社会ネットワークがセーフティネットとして機能することが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果の限界は、高校に進学できている生徒に研究対象が限定されてしまうことである。今後は義務教育段階にも注目し、これまで得られた知見の一般化可能性について検討を進める予定である。キャリア移動に関する分析については、今後移民を対象とする調査の実施とデータ分析を通じて、さらに展開させる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
移民のなかでも学齢期にある子どもについては、引き続き貴重な公開データである学力調査データを用いる。今後は、PISAのみならずTIMSSなども活用する予定である。また、PISAやTIMSSデータのなかには部分的ではあるが移民の子どもの親に関する情報も含まれている。本年度企画・実施予定の調査において、これまでの研究成果の蓄積を活用する。
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Causes of Carryover |
次年度に実施する予定の外国人を対象とする調査に充当するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
多言語対応にかかる翻訳とバックトランスレーション、ウェブ調査の画面作成に費用をかける予定である。
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Research Products
(2 results)