2019 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical research on the effects of private and public supports on well-being
Project/Area Number |
15K17203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴田 悠 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (50631909)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 主観的幸福感 / 保育 / 社会経済地位 / 傾向スコア / 因果推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、公的サポートとして「保育」(保育所への通園)を、私的サポートとして「家庭での育児」(親の社会経済地位によってその質が異なることが先行研究から分かっている)を取り上げ、それらの交互作用に考慮に入れながら、それらが「将来(成人後)の幸福感」やその諸要因に与える長期的な影響を、(保育所通園の傾向スコアを用いた)因果推論によって検討した。 とくに保育所通園の(成人後までの)「長期」的な効果については、日本ではこれまで先行研究が見当たらない状況にある。保育所通園の「短期」効果については、Yamaguchi et al.(2018)が、3歳半までの発達への効果を明らかにしている。それによれば、2歳半時点での保育所通園が、家庭のみでの養育と比べて、3歳半までの子どもの発達(言語発達、加えて母親が高卒未満の場合は攻撃性や多動性に関する行動面の発達も)にポジティブな影響を与える(また母親が高卒未満の場合にはそれら3つの発達が遅れやすい)。また、保育所通園と幼稚園通園の10代までの「中期」効果については、Akabayashi and Tanaka(2013)が都道府県パネルデータで検討しており、それによれば、いずれも高校進学率や大学進学率を高めるが、保育所通園のほうがそれらに対してより大きな効果を示した。本研究に最も近い先行研究は以上の2つであり、それらと比較しても、「保育所通園の長期的な効果」を対象としている点で、本研究は新しいものであることが分かる。 本研究の分析結果として、「不利な家庭」(社会経済地位:下位1/2)出身の「20~44歳」の回答者では、小学校入学前に保育所に1年間以上通うと(幼稚園のみに通う場合と比べて)、将来、非正規雇用になりにくくなる、有配偶者の確率が高まる、対面交流の頻度が増えるなどの傾向が見られ、さらにそれらの結果として主観的幸福感が高まる傾向が見られた。
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Research Products
(2 results)