2015 Fiscal Year Research-status Report
「こころの専門家」の誕生―沖縄県における1980年から現在までの医療人類学
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15K17304
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
東畑 開人 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 講師 (30747506)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 臨床心理学の歴史 / 沖縄 / ローカル文化 / 医療人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はほぼ予定通り研究課題を行った。課題①である「沖縄の初期臨床心理士会メンバーおよび非臨床心理士への調査」は順調に行われた。沖縄看護大学の渡久山准教授の協力を得たことで、現在沖縄在住でアクセス可能な最初期の臨床心理士のほぼ全数の調査を行い、加えて児童相談所などで心理的援助を行っていた非臨床心理士へのインタビュー調査も幅広く行うことができた。その結果、沖縄では米軍統治下にあった影響で、アメリカ精神医学・心理学の影響が強く、それは主に琉球大学の人脈を通じて広がっていったことが明らかになった。加えて、沖縄の土着的な治療文化は、最初期の臨床心理士にあっては直接間接に影響を及ぼしていたことが明らかにされた。 課題②の「公的機関関係者へのインタビューおよび公的資料の収集と分析」も順調に推移した。主に精神病院の院長や事務長にインタビューを行い、当時の様子を再現するデータを得ることが出来た。さらには、新聞記事や公文書館での調査を行い、基礎的なデータを収集することが出来た。この調査の結果、臨床心理学が関係する様々な公的セクターの影響の中発展してきたという事実を確認し、その際に私立精神病院長の影響が大きかったように、それを担った人物の個人史やパーソナリティとも深く関連して発展を遂げてきたことが明らかになった。 以上述べてきたように、本年度は主に1970年前後における臨床心理学や心理職の状況についての調査を行い、十分な成果を得ることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまで研究協力者である沖縄県立看護大学渡久山朝裕准教授の支援もあり、今年度30人ほどのインタビューを行い、データの収集を得ることが出来た。したがっておおむね計画を果たしており、順調に進展していると言える。ただし、現在の時点で2名ほど、沖縄初期の臨床心理士の中で調査ができていない人物がいる。これは本人が引退を表明しているために、インタビュー依頼を謝絶したことによる。しかし、沖縄の臨床心理学の歴史を語るうえで最重要な人物であるため、現在交渉中である。次年度でもう一度チャレンジすることにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は1970年代以降の歴史的状況の変化についてインタビューを重ねていく。加えて、研究する中で、沖縄の臨床心理学史は日本全体の臨床心理学史と密接に結びついていることが理解されたため、より広い文脈として日本の臨床心理学史を視野に入れ、調査を行っていく。その上で、1980年代1990年代の沖縄の臨床心理学を担った人物への調査を重ねていくこととする。加えて、研究計画にもあったように、沖縄社会でのカウンセリングや心理療法の受容度についての調査を行うために、質問紙などを用いた調査を行う。このとき、沖縄とほぼ同じ条件にある他府県との比較、あるいは東京などの都市部との比較を行うこととする。27年度にやり残したことは、重要人物への残されたインタビューであるので、これも引き続き交渉を続けていく予定である。
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Research Products
(5 results)