2016 Fiscal Year Research-status Report
「こころの専門家」の誕生―沖縄県における1980年から現在までの医療人類学
Project/Area Number |
15K17304
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
東畑 開人 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 講師 (30747506)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心理臨床の医療人類学 / 治療文化 / 臨床心理士 / 東アジアの心のケア / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の調査を推進した。 ①初期臨床心理士会メンバーの全数調査の残されていた分を完了した。1年目にはアクセスのできなかった臨床心理士にもアクセスができ、かつ非臨床心理士についても広くインタビュー調査を行うことができた。②公的資料の収集(特にメディア関係)を終了した。③市民向けアンケートの実施。また全国規模での心理臨床関係者の職能調査に参加してデータを得たのもあり、科研費で計画した調査の多くを今年度で達成することができた。④さらには沖縄県の臨床心理学の歴史に影響を与えている、沖縄県外での文化資源にも広く調査を行うことに成功した。⑤加えて、最終年度に行う予定であった、アジア各地の「こころの専門家」の実態についての予備調査を今年度中に始めることができた。具体的には台湾のインフォーマントを作り、一度現地調査を行うことができた。 以上を踏まえて明らかになってきたのは、心理臨床の普及において外的要因の影響が非常に大きいということである。それは人材面でもそうであるし、制度面でもそうである。したがって、文化的要素が大きいのは、臨床心理学でも周縁部に位置する治療文化や人材であることが明らかになった。つまり、中核部では中央組織や国際基準の影響が強いために、文化的な影響をできるだけ排する形で、心理臨床が整備されていくのに対して、周縁部ほど土着の治療文化や地域固有の経済システムにそぐう形で心理臨床は発展していく。例えば、沖縄で言えば、学校における相談員にはそのような文化的な影響が色濃く見られる。
これまでの研究によって、次年度で普遍的なモデルに至るための準備は十分になされたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に行う予定であった研究に加えて、最終年度に行う予定だった国際比較研究の準備段階にまで研究が進展したという理由から。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は国際比較を推し進め、その上で人類学的な「こころの専門家」についての普遍的なモデルを生成することが目指される。それを国際的な場で発表していくことに、力を注ぎたい。その上でも、現在交流のある台湾やインドのみならず、韓国やシンガポール、そしてカンボジアなど、アジア圏の広い地域での研究協力を募ることが大きな課題となる
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Causes of Carryover |
昨年度、思いがけず沖縄での調査がはかどり、一度の訪問で複数人の調査に成功したということから、若干費用が余ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、旅費として学会発表等のための海外出張に使用することとする。
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Research Products
(6 results)