2016 Fiscal Year Research-status Report
勝田守一の現代教育学における継承可能性に関する研究
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15K17347
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
神代 健彦 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (50727675)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 勝田守一 / 戦後教育学 / 道徳教育学説史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後日本の教育研究をリードした教育学者勝田守一(1908-1969)について、彼の主張した教育学説の詳細を明らかにするとともに、現代教育学における勝田教育学の批判的継承を模索することを目的としている。2年目にあたる2016年度の課題は、①勝田の生活綴方論、②教育科学研究会における勝田の位置づけと研究活動、さらに1年目の研究でその重要性があきらかになった③勝田の道徳教育論について明らかにすることであった。 ①については、関連する資料の収集も進んでおり、今後はそれらの分析をさらに進めていく。またこれまでの分析において、勝田の生活綴方論は、「教師の綴方」ともいわれる実践記録論へと発展する過程で議論が深まっていることが確認されたため、今後この課題は勝田の実践記録論の検討へと発展する予定である。また勝田の実践記録論は、現代の教師教育(現職教員の専門性の向上)にも資する重要なテーマであることが予想される。 ②については、生前の勝田を知る関係者への聞き取りを行った。東京大学教育学部における勝田の学生指導のあり方や、教育科学研究会との関わりについていくつかの情報を得た。このことから、聞き取りという研究方法が勝田研究において有力な方法であることが改めて確認された。さらなる聞き取り作業の可能性について、今年度も探っていきたい。 ③については予想以上の進展があり、2016年9月に学術論文として発表した。勝田の著作集に収められていない論考までを射程に入れて分析を行った結果、いわゆる道徳の教科化という現在の教育課題について、勝田の議論から一定の示唆が得られることが分かり、この点を含めて論文とした。現在の道徳教育研究は、しばしば授業開発が先行し、相対的に、原理的・理論的基礎の検討が遅れているが、勝田の道徳教育論はそのような道徳教育の理論的基礎を考えるうえで重要な示唆を与えると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた課題は2015年度、2016年度とも概ね一定の成果を得たうえで、さらに2016年度は、本科研申請段階では想定していなかった勝田守一の道徳教育論を学術論文にまとめた。このことから本研究は、当初の計画を超えた研究の進捗および成果の発信を遂行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、申請段階での計画通りとしたい。具体的には、1980年代以降のポストモダン思想に影響を受けた教育学による、勝田守一を含む戦後教育学への批判を再度詳細に検討しつつ、その批判を超えて勝田教育学を批判的に継承する道筋について明らかにし、学術論文等で発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2016年度の研究はおおむね計画通りに遂行できたが、一部購入予定だった図書の増刷が遅延して購入できなかったため、若干の残額(繰越金)が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定だった図書について、増刷・販売再開次第、購入する。
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Research Products
(1 results)