2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17496
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
保井 晃 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (40455291)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光電子分光 / 磁性材料 / 磁気物性 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、磁性体の電子・磁気状態の詳細な解析を可能とする磁場印加中試料に対するその場光電子分光測定技術の開発を行うことを目的としている。今年度は、そのフィージビリティスタディとして巨大な磁化を有する着磁済みネオジム磁石の光電子分光測定技術の開発を行った。ネオジム磁石のようなバルク強磁性体からは強い漏洩磁界が発せられるため、それにより光電子の飛行軌道が曲げられることが懸念される。磁気回路に磁石試料を埋め込み、漏洩磁界を磁気回路中に閉じ込めることにより、容易磁化軸方向で0.3 Tの表面磁束密度を有するネオジム焼結磁石のHAXPES測定が可能となった。さらに、Fe 2p内殻スペクトルの円偏光依存性測定を行い、明瞭な磁気円二色性の観測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の予定通り、着磁済みバルク強磁性体の光電子分光測定技術の開発を行い、これに成功した。これは、本研究の目的である磁場印加中その場測定技術開発の指針を与える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である磁場印加中その場光電子分光測定技術を実現させる。そのために、磁場印加用電磁石と磁気回路を備えた試料ホルダーを作製する。光電子の飛行軌道に影響を与えないよう、電磁石、および、試料と磁気回路間の境界部からの漏洩磁場の遮蔽を強固にする必要があるが、今年度で得られた知見をもとに開発を進める。もし、電磁石からの漏洩磁場の遮蔽が難しいなど、電磁石を用いた磁場印加測定が困難であれば、永久磁石を用いた磁場印加を試みる。開発したシステムを用いて磁性多層膜の磁場印加中その場HAXPES測定を行う。
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Causes of Carryover |
今年度実施した着磁済みネオジム磁石の光電子分光測定技術開発において、実験後の解析の際に論文執筆のためには追加実験が必要であることが判明した。そのため、論文執筆後の発表を予定していた学会発表を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた発表を行うための学会費用に充てる。一方で、現在製作している電磁石と磁気回路を備えた試料ホルダーを用いた磁場印加実験において、漏洩磁場の遮蔽が難しいなどの問題が生じる可能性がある。その際には、試料ホルダー形状を検討するために、複数の試作品を製作し、最適な形状を検討することを考えており、その製作費に充てることも考えられる。
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Research Products
(4 results)