2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17794
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
癸生川 陽子 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70725374)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 隕石 / 有機物 / 熱履歴 |
Outline of Annual Research Achievements |
隕石に含まれる有機物は、隕石母天体である小惑星の熱履歴の情報を保持していると考えられている。申請者は、隕石中の有機物の熱分解を反応速度論を用いて温度と時間の関数として表すことにより、小惑星の熱履歴の制約を与えることを見出した。しかし、速度論においては、1つの指標に対して「温度」と「時間」という2つのパラメーターがあるため、一意に熱履歴を求めることが難しいという問題がある。したがって、脂肪族炭素の減少のほかにもう1つの指標を加えることができれば、一意に熱履歴を求めることができる。そこで、芳香族化度の増加も熱履歴の指標となることが知られており(Buseman et al., 2007; Cody et al., 2008)、もう1つの指標として有効であると考えられる。以上の、脂肪族炭素量f1(T,t)と芳香族化度f2(T,t)という2つの独立した指標を組み合わせることにより、温度Tと時間tを一意に求めることが期待できる。そこで本研究では、(1)隕石有機物の加熱変化の2つの指標から、反応速度論を用いて加熱温度と時間を算出する新しい手法を確立し、(2)実際の隕石有機物と比較することによりこれらの小惑星の熱履歴を推定することが目的である。特に曖昧であった、①小惑星自体の発熱により低温・長期間加熱された場合、及び②衝突などの衝撃により高温・短期間加熱された場合、をはっきりと区別することができると期待される。初年度においては、小惑星環境模擬実験により、隕石有機物を指標とした反応速度論を用いて熱履歴を推定する手法を構築する。そして次年度は、さまざまな隕石の分析を行い、初年度に構築した手法を用いてこれらの母天体である小惑星の熱履歴を求める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、Murchison隕石の加熱実験を行い、ラマン分光法によりスペクトルの変化を調べた。芳香族化度の指標としてGバンドの半値幅及びピーク位置を用いて解析する手法を確立した。また、Y-86720隕石とTagish Lake隕石について、脂肪族炭素量と芳香族化度の2つの指標を用いて、加熱温度・時間を求めた。隕石の加熱実験はまだ改善の余地があり、次年度継続する予定であるが、次年度に行う予定であった、これらの速度論的指標を実際の隕石の熱履歴の見積りへ適用することができたため、おおむね順調な進行具合といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に行った隕石の加熱実験において、加熱ステージを用いてラマン分光装置下でその場観測を行ったが、加熱中の酸化還元状態のコントロールに難があったため、次年度は実験方法を変更し、バッチ法にて温度・時間を変化させて加熱した試料を作成し、ラマン分光分析を行うこととする。これにより、より正確な温度指標を構築することが可能となる。 また、平成27年度は、Y-86720隕石とTagish Lake隕石についてのみ熱履歴の見積を行ったが、今後は隕石の種類を増やす予定である。また、隕石母天体の加熱を温度一定として加熱温度・時間を求めたが、実際は徐々に昇温・降温するので、その過程を考慮した計算を行う。
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Research Products
(4 results)