2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞内在性蛋白質間相互作用のイメージング解析を指向した新規蛋白質ラベル化法の開発
Project/Area Number |
15K17884
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 朋則 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10746639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質化学修飾 / 細胞内有機化学 / 蛍光イメージング / FKBP12 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の蛍光イメージングは、特定の蛋白質の細胞内動態や分子間相互作用を解析するための強力な手法である。しかし従来の蛍光蛋白質を用いた標識法は、標的蛋白質の機能阻害や融合蛋白質の過剰発現によるアーティファクトなど、いくつかの問題を抱えていた。本研究では、細胞内に内在的に発現している蛋白質を化学修飾によって選択的に標識し、その蛋白質が関与する動的な分子間相互作用を定量解析することを目指す。より具体的には、特異的かつ高効率な発蛍光型新規蛋白質ラベル化法を開発し、蛍光相関分光法によって特定の蛋白質間相互作用を高感度に検出する技術を構築する。平成27年度においては、当初予定していた「Petasis反応」を利用したラベル化法に加えて、「N-acyl-N-alkylsulfonamide(NASA)」を反応基として有するリガンド指向性ラベル化剤の開発を行った。精製蛋白質を用いた試験管内実験によって、NASA型ラベル化剤は従来のリガンド指向性化学と比較して標的蛋白質をより迅速かつ高効率に化学修飾可能であることが示された。特筆すべきことに、細胞内在性FKBP12を標的としたラベル化においては、反応時間1hで細胞内FKBP12の80% を修飾することに成功した。さらに別の標的蛋白質として、大腸菌ジヒドロ葉酸レダクターゼ(eDHFR)、熱ショック蛋白質90(Hsp90)などの細胞内ラベリングも可能であることを実証した。また、消光団をNASA型ラベル化剤に組み込むことで、ラベル化に伴い蛍光を発する「発蛍光型ラベル化剤」の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リガンド指向性化学の新たな反応基としてN-acyl-N-alkylsulfonamideを見出し、これにより本研究計画の最初の課題であった細胞内在性蛋白質の迅速かつ高効率なラベル化が達成できた。また、蛍光イメージングのための発蛍光型ラベル化剤についても開発の目処はついており、本研究計画は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は様々な蛋白質に対するNASA型ラベル化剤を合成し、細胞内にもともと存在している内在性蛋白質の寿命解析や相互作用解析への応用展開を検討する。また、「発蛍光型NASA型ラベル化剤」の分子構造をより最適化し、標的蛋白質の生細胞内イメージング及び蛍光相関分光法による分子間相互作用解析に挑戦する。
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Causes of Carryover |
本研究計画では、細胞内でも適用可能な新しい有機化学反応および分子プローブの開発が必要であるため合成試薬の購入に予算を大きく計上していた。ところが幸いなことに、研究の初期段階で有用な反応を見出すことに成功したので、本年度では大規模な構造最適化を行う必要がなく、合成試薬類の購入費が当初の予定よりも少なくなった。一方、次年度には発蛍光型ラベル化剤の開発のために、多数の高価な蛍光色素類を購入する必要がある。従って、本年度の残りを次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
蛍光イメージング実験を遂行するための消耗品として、細胞培養用のプラスチック器具類、一般・培養試薬類、抗体などの生化学実験用試薬、蛍光顕微鏡の光学部品を購入する。また、発蛍光型ラベル化剤作製のために、合成蛍光色素を購入する。また、論文英文校閲費を謝金等として計上し、研究成果の発表に必要な国内外の旅費及び発表論文の印刷料を計上する。
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