2016 Fiscal Year Research-status Report
巨大地震・強風時における免震装置の機能維持性能評価と簡易予測モデルの提案
Project/Area Number |
15K18161
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
白山 敦子 大阪工業大学, 工学部, 講師 (00736077)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 免震建物 / 巨大地震 / 地震応答解析 / 機能維持性能 / 残留変形 / 地震応答特性 / 地震応答低減効果 / 耐震設計法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、事業継続性(BCP)や耐震安全性確保の観点から、免震構造を採用する建物が増えており、2011年に発生した東日本大震災において、免震構造は高い耐震性を発揮した。免震構造への社会的ニーズは、急激に高まっており、様々な種類の免震装置が開発され、それらを組み合わせることで適切な設計が行われている。しかしながら、今後、想定されている長周期・大都市直下の極大地震は、これまでの設計レベルを大幅に上回る。さらに、免震構造の超高層化に伴う風荷重の増加により、風の影響を受けやすくなっており、耐風設計が問題視されている。そこで本研究では、実験ならびに解析的検討により、巨大地震や強風発生後に、免震装置に生じる「残留変形」および「回復性状」を明確にし、高性能な建物を実現するための設計時の指標として資するデータを提供することを目的としている。 2年目である平成28年度は、平成27年度に実施した地震応答解析に加えて、免震建築物と地盤との動的相互作用効果の影響を考慮した地震応答解析を行うことにより、より詳細に免震建築物の耐震性能を評価し、定量的な評価が可能な精確な応答解析モデルを用いて入力と応答の両面から検討を行い、今後発生する巨大地震に対する免震建築物の応答をできるだけ精度よく予測する手法を提示した。また、強風時における免震装置(鉛プラグ入り積層ゴム支承)の実験結果をもとに、強風時などにおいて顕著にみられるクリープ特性を考慮した新たな復元力特性のモデルを提案した。さらに、実験により、残留変形を与えた後に、どの程度回復できるか検証を行うために、試験体(各種免震装置)設置のための鉄骨冶具を製作し、計測システムの計画を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は3ヶ年の研究計画となっている。平成27年度は、検討対象となる免震建物モデルを作成し、地震応答解析により、様々な地震動に対して、免震装置に生じる「残留変形」などに着目してパラメトリックスタディを行い、定量的に把握した。平成28年度は、地震応答解析や実験により検証を行った。実験は、免震装置単体および複数の種類を組み合わせた場合を想定し、免震装置に軸力および水平荷重を与え変形させた後、水平荷重のみを除去した上で長時間放置することにより、どの程度回復できるかを検討した。平成29年度は、平成27年度の解析結果と平成28年度の実験結果を比較検討し、入力波形、特に巨大地震・強風時における免震装置の復元力特性について、新たな評価手法や簡易予測指標を提案し、その妥当性を定量的に示し、実務構造設計時における免震装置の検討に対して大きな助けとなる資料を提示することを予定している。 平成28年度の達成度としては、平成27年度に実施した地震応答解析に加えて、免震建築物と地盤との動的相互作用効果の影響を考慮した地震応答解析を行うことにより、より詳細に免震建築物の耐震性能を評価し、定量的な評価が可能な精確な応答解析モデルを用いて入力と応答の両面から検討を行い、今後発生する巨大地震に対する免震建築物の応答をできるだけ精度よく予測する手法を提示した。また、強風時における免震装置(鉛プラグ入り積層ゴム支承)の実験結果をもとに、強風時などにおいて顕著にみられるクリープ特性を考慮した新たな復元力特性のモデルを提案した。さらに、残留変形を与えた後に、どの程度回復できるか検証を行うために、試験体設置のための鉄骨冶具を製作し、計測システムの計画を行った。 以上のように、計画した研究内容を実施するとともに、実験準備を着実に進めた成果を鑑みて、本研究課題の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、計画した実験について、早急に取り掛かる。具体的には、免震構造に一般的に用いられている「天然ゴム系積層ゴム支承」、「高減衰ゴム系積層ゴム支承」、「鉛プラグ入り積層ゴム支承」、「すべり支承」、「鉛ダンパー」および「鋼材ダンパー」を対象とする。免震装置に鉛直荷重および水平荷重を与え変形させた後、水平荷重のみを除去した上で長時間放置する。 1)実大で実施できる免震装置について、免震装置単体での静的加力実験を実施し、弾性剛性や摩擦係数などの基本的な性能・数値を得る。さらに、除荷時における剛性および機能回復までの時間を計測する。2)実大試験体と比較して縮尺率を検討し、免震装置に作用する軸力を作用させ、縮小試験体を用いて、各種免震装置単体の静的加力実験を実施する。3)さらに大変形を与え単体での特性を確認する。4)実施構造設計を踏まえ、2種類または3種類の免震装置を組み合わせた実験を行う。 また、平成27年度の地震応答解析結果と平成28年度の解析結果、平成29年度の実験結果を比較検討し、入力波形、特に巨大地震・強風時における免震装置の復元力特性について、新たな評価手法や簡易予測指標を提案し、地震応答解析結果を用いて再検証することにより、その妥当性を定量的に示し、実務構造設計時における免震装置の検討に対して大きな助けとなる資料を提示し、公開する計画である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に行う様々な免震装置の実験実施に当たって、想定以上に費用がかかると判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各種免震装置などの試験体費用や、試験体設置のための鉄骨冶具を製作する費用に使用する計画である。
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