2016 Fiscal Year Research-status Report
都心部における中小老朽オフィスストックの形成とその利活用方策に関する研究
Project/Area Number |
15K18187
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山村 崇 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (20732738)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 事業所立地 / 中小老朽化オフィス / オフィスストック |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、大都市部における中小老朽オフィス群の発生実態と新興企業の流入要因の把握を進めた。特に、東京都区部の零細オフィスビル集積地域に着目し、そこにおける既存建築ストックの特徴を、建物単体と近隣環境の両側面から詳細に捉えるとともに、事業者に対するヒアリング調査を併せて実施して、立地業種の変化とテナントの入居条件の解明を試みた。その結果、主に以下二点に関する成果を得た: (1)オフィス利用状況に影響を及ぼしうる各種環境条件に基づいて、零細オフィスビル集積地域を街区単位で類型化し、「都心遠隔・低層築古型街区」、「駅遠低商業・小規模型街区」、「駅遠低商業・路地接道型街区」、「高層築浅・大事業所型街区」、「都心近接・駅近高商業型街区」の5つの街区類型を得た。また、類型ごとの建築更新の動向から、都心に近接したエリアではオフィス建設が多いこと、都心から比較的距離のあるエリアではマンション建設が多く見られることなどを明らかにした。 (2)街区類型別に立地業種の変化を分析し、製造業・卸売業・不動業・物品賃貸業が流出すると同時に、対個人・対事業所サービス業が流入する傾向を明らかにした。一方で、街区類型ごとの特徴を詳細にみると、都心に近接したエリアでは、対事業所サービス業が増加するとともに対個人サービス業も増加している一方で、都心から距離のあるエリアでは対事業所サービス業が増加しつつ対個人サービス業が減少するなどの地域差があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、テナントの入居条件の解明のために、「街区類型」ごとの典型街区に立地する地場の不動産事業者に対するヒアリング調査を進めたが、いくつかの街区に関しては対象事業者の数が僅少で、得られたサンプル数が当初想定したよりも少なかった。そのため、収集した「語り」に基づく定性的データの分析を試みたものの、結果として細部にわたって安定した傾向を把握することが困難で、そこから得られた知見も表層的なものに止まらざるを得なかった。 このようにサンプル数が当初想定よりも少なくなった原因の一端は、「街区類型」ごとの典型街区の抽出にあたって基準とした同質地域の「連担性」に関する、判定の閾値を厳しく設定しすぎたためであると考えられる。閾値を再設定するなどして分析対象とする典型街区を増やしたのち、引き続き事業者に対するヒアリング調査を進めて「語り」のサンプル数を確保したうえで、再度分析を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
同質地域の「連担性」に関する判定の閾値を再設定することで、「街区類型」ごとの典型街区を改めて選定したうえで、それぞれの典型街区に立地する地場の不動産事業者を再度抽出する。そうして抽出された不動産事業者に対して、零細オフィスビルにおける立地業種の変化実態に関する今年度までの知見を踏まえた「調査枠組み」にもとづくヒアリング調査を実施し、零細オフィスビルへのテナントの継続的入居の条件を分析する。また、立地業種の変化とその要因についても、ヒアリング調査の中で確認を行う。 その結果をもとに、更新期を迎えつつある零細オフィスビルが、時には建て替えられ、時には継続的に利用されていることの実態を詳細に把握するとともに、良質な建築ストックとして継続的に利用されるための条件を整理する。そのうえで、築30年を越え、設備的な修繕や建築更新の時期を迎えて厳しい市場環境にさらされている零細オフィスストックの利活用を基調とした、スクラップアンドビルド型の開発とは異なる、業務市街地の持続的な更新手法を提示する。
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Causes of Carryover |
地場の不動産事業者を対象としたヒアリング調査を実施したが、得られたサンプル数が当初想定したよりも少なく、そのため収集した定性的データの分析を試みたものの結果として細部にわたって安定した傾向を把握することが困難で、そこから得られた知見も表層的なものに止まらざるを得なかった。調査対象が少なくなった結果として、調査に係る諸費用も低減されたが、その分を次年度にまわして、ひきつづき調査を実施し、必要なサンプル数を確保する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はサンプリングの方法を改善し、調査対象を広げて、地場の不動産事業者へのヒアリング調査を継続する。これに伴って、当該調査に必要となる諸費用(移動のための旅費、ならびに調査結果のファイリングなどに必要な消耗品費)を支出する予定である。
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