2017 Fiscal Year Research-status Report
近代イタリアの都市改造期におけるヴィラ群の変容に関する研究
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15K18198
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
會田 涼子 近畿大学, 建築学部, 講師 (40734067)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イタリア / フィレンツェ / 近代都市計画 / 19世紀 / 丘陵地 / ヴィラ / パラッツォ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平成30年3月2日から8日にかけて、フィレンツェに滞在し、研究対象地区の現地調査(実測、写真撮影など)を行い、調査結果の図面化、図式化を行い、分析を進めた。また、希少書籍と古地図に関してはフィレンツェ内の地図発行機関や古書店をまわり、それぞれ購入し、文献や地図のリスト化・データベース化を行った。また、インターネットで閲覧できる歴史史料の継続的な探索とデータベース化を行った。 以上は、19世紀半ばの首都期のフィレンツェ都市部と都市拡張部を対象として行ったものである。また、その時期の都市改造の前提となる18世紀の開墾事業や運河建設などの河川整備も視野に入れたものである。 フィレンツェの丘陵地区のヴィラ群に関しては、前年度までの建物配置やファサードの検証に加え、実測と史料探索によって平面図が入手でき、外観と平面の関係が部分的ではあるが明らかとなった。 旧市壁跡環状道路沿いの住戸については、現地調査の結果、パラッツォ形式とヴィラ形式、ヴィラ=パラッツォ形式の3種類が混在し、旧市壁の内外両側にヴィラ形式の住戸が建てられていたことがわかった。パラッツォ形式には、同街区内の隣地が未建設地の場合、後に共有壁を介してパラッツォを建設することを前提としていると思われるものと、そうでないものに分類されることがわかった。ヴィラ形式の住戸は、都市改造時に建設された公園に面したところにみられるほか、都市改造以前に菜園もしくは農地だった箇所に存在していた。また、住戸が街区の角にあるもので、一面は全面に庭園のあるヴィラ形式をとっていながら、他面では隣り合う住戸と共有壁を介した連続して建てられるパラッツォ形式をとっている、ヴィラ=パラッツォ形式がいくつかみられることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までは、フィレンツェのコッリ大通り周辺の住居地区について、文献調査と実施調査を行い、フィレンツェの近代化都市改造を設計した建築家ジュゼッペ・ポッジが作成した手記である土地利用規定書を精査することによって、大通りの景観に関わる建築条件のありようを明らかにした。また、土木的な視点による考察から、コッリ大通り周辺住居地区が18世紀の洪水対策案における迂回路が構想された場所であることが明らかとなり、19世紀の都市改造の際にも、過去の災害の調査と研究の蓄積が如実に影響していることがわかった。 このうち、前年度はフィレンツェの近代ヴィラのうち、ポッジが設計したものを個別に分析した他、同様にポッジ設計のパラッツォが広場を形成しているクローチェ門広場とイギリスの事例の比較と、19世紀の都市改造の前提となる18世紀の洪水対策などの土木事業に関しては、当初予定していなかったが新たに追加して前年度に行った。このため、本来、前年度に行う予定だった旧市壁沿いのパラッツォとヴィラの分析を今年度行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の成果を踏まえて、フィレンツェのコッリ大通り周辺住居地区の各分析と考察を論文化する。旧市壁跡環状道路周辺の住戸については、既存の都市構造との関連性を古地図や課税用登記台帳と地図を用いて分析を深める。 次に、ローマに対象を移して関連の文献やデータを収集し、ローマのルネサンス期とバロック期のヴィラの都市スケールによる把握を行い、19世紀においてそれらがどのように分筆されたかを整理する。そのうえで、19世紀のヴィラを対象に現地調査を行い、フィレンツェのケースと同様の手法で、ファサード、建物配置、平面などを分析していく。
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Causes of Carryover |
今年度分は平成29年3月4日から平成29年8月11日まで産前産後の休暇および育児休業を取得し、それに伴って補助事業期間の延長を申請し承認された。そのため、当初の研究計画に変更が生じ、予定していた現地調査が年2回のところ1回となった。また、今年度の使用予定額に含めていた平成30年3月に行った現地調査のための出張費は次年度予算で計上されることとなったため、次年度使用が生じた。
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