2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18619
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
中下 留美子 国立研究開発法人森林総合研究所, 野生動物研究領域, 主任研究員 (00457839)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 野生動物 / 食性履歴 / 体毛 / 骨コラーゲン / 歯 / 安定同位体比 / クマ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,野生動物と人との軋轢が顕在化し,農林水産被害や人身被害等が頻発し,多数の個体が捕獲されている.しかし,駆除個体の詳細な加害実態(捕獲個体はなぜ出没したのか?実際に被害をだした個体なのか?いつからどれくらい被害と関わっていたのか?など)は把握されておらず,根本的な被害対策は遅れている.そこで,本研究では捕獲個体の加害実態履歴を明らかにするために,野生動物(主にクマ類)の一生の食性履歴を明らかにする手法の開発を目的としている.これまでの成果から,体毛による短期間の食性履歴(1~2年間)と骨による長期間の平均的食性(数年~個体の一生)の推定が可能となっており,今年度は長期間の食性履歴推定の解像度を上げるため,歯に形成された年輪から食性履歴を推定する手法を検討した.その結果,餌資源を反映するタンパク質が比較的豊富に含まれ,同位体比分析に必要な試料量を確保できる犬歯の象牙質部分から年輪を削り出して,コラーゲンを抽出する手法が有効であることが分かった.様々な年齢の個体から犬歯の象牙質を観察したところ,1歳では象牙質はまだ形成されず,2歳以降に形成され,歯髄腔を埋めるように形成されていくことから,2歳~死ぬまでの食性履歴を推定できる.つまり,象牙質の最外側部分は亜成獣時の食性を,歯髄腔付近は捕獲直前の食性を,その間の部分の年輪は亜成獣~捕獲前の間の食性を推定することが可能であることが分かった.ただし,象牙質の年輪と正確な形成時期の関係については,今のところ明らかにできておらず,引き続き検討していく必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
H27・28年度に確立した捕獲個体の一生の食性履歴の分析手法を野生ツキノワグマに適用し,その有用性の検証を行う.具体的には,これまでに収集した野生の有害捕獲個体試料から,農作物被害と関連した個体,家畜飼料に餌付いた親子の捕獲個体,養魚場に餌付いた個体などを用いて,それらの個体がどの齢ステージからどれほど被害と関連していたか,解明することを試みる.
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Causes of Carryover |
予定していた消耗品費の価格変動や消耗品使用量の若干の変動から,残金が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品費に加算して使用する予定である.
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Research Products
(3 results)