2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18704
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
成澤 直規 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (90632034)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオフィルム / Streptococcus mutans / 納豆 / プロテアーゼ / う蝕 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに市販納豆中に含まれるう蝕原性バイオフィルム抑制因子は熱に対して感受性であることを明らかにしている。納豆は大豆を原料として納豆菌の菌体外酵素の働きにより作られる発酵食品であり、各種酵素が豊富に存在する。よって我々は納豆中の酵素に着目して解析を行った。36種類の市販納豆を対象として、プロテアーゼ活性とバイオフィルム形成抑制効果を調べた結果、比較的高い相関性が認められた(R2=0.82)。加えて、スクロース分解能を有するスクラーゼも強いバイオフィルム形成抑制効果を有することが明らかとなった。H27年度の解析により、納豆菌が生産するヌクレアーゼがバイオフィルム形成抑制効果を有することを明らかにしている。納豆菌が産生する複数の酵素がう蝕原性細菌に多面的に働くことで強いバイオフィルム形成阻害効果を発揮するものと推測された。他方、納豆抽出液には成熟したバイオフィルムへの分解効果は認められなかった。このことから、納豆抽出液はバイオフィルム形成の初期および中期において影響するものと考えられた。う蝕原性細菌のバイオフィルム形成において、菌体外の非水溶性グルカン合成が最重要因子である。納豆抽出液、および納豆由来プロテアーゼの添加により非水溶性グルカンの合成が阻害されることが定量試験、およびin situでの顕微鏡観察により確認された。納豆菌の代謝産物の中でジピコリン酸等の抗菌性物質の存在が報告されているが、納豆抽出液にはう蝕原性細菌S. mutansを含む口腔常在性の近縁種に対しての抗菌性は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通り、納豆抽出液中に含まれるバイオフィルム形成抑制因子を明らかにすることができた。またこれら解析にあたり、バイオフィルム形成促進因子の存在が見つかるなど、当初は予想していない興味深いデータも得られている。S. mutansが納豆抽出液存在下でどのような遺伝的応答を示すのかについて、すでに取り掛かっている段階であり、グルカン合成に関与する遺伝子に影響することが少しずつ明らかになってきた。この点については、H29年度に継続的に実施する予定である。また、納豆抽出液中に含まれるプロテアーゼ等の抑制因子の探索では、成分分析を含め現在実施しているところであり、概ね予定通り進んでいる。 H29年度に実施予定の臨床応用を目指した基礎実験については、人工唾液とハイドロキシアパタイトディスクを用いた実験に取り掛かっており、この点については当初の予定より早く計画が進行中である。これら結果については複数の学会にて報告している。 以上の理由より、これまでのところ実験計画はおおむね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
納豆中のバイオフィルム形成抑制物質を探索する中で、いくつかの市販納豆においてプロテアーゼ活性が高いにも関わらず、期待された抑制効果を示さないものが見つかった。加えて、納豆抽出液を加熱処理を行い、抑制因子を不活化することでバイオフィルム形成に促進的に働く現象も見られた。これは今後応用化・実用化へ向けて無視することができない事実である。申請者は納豆中の各種成分が複雑に影響を及ぼすことで抑制効果が決定されるものと考えた。今後はプロテアーゼなどの抑制因子だけではなく、他の因子にも着目して検討を行う予定である。具体的には、リバースザイモグラフィーなどの手法を用いて納豆抽出液中のプロテアーゼ活性に影響を及ぼす因子について探索する。 納豆の応用化へ向けては、大豆品種や発酵条件に着目して納豆の製造を実験室スケールで実施し、バイオフィルム形成抑制効果の高いものを創成する。これを用いてより口腔環境を模した実験系にて評価を行う予定である。
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Research Products
(3 results)