2015 Fiscal Year Research-status Report
ニホンジカとニホンカモシカの環境及び餌資源における競合に関する研究
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15K18710
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安藤 正規 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (80526880)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニホンジカ / カモシカ / DNAバーコーディング / 次世代シーケンサー / 糞分析 / 種間競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本において、ニホンジカ(以下、シカ)とカモシカが同所的に生息し、かつシカの個体数が増加している地域では、カモシカの個体数の減少や利用場所の変化が報告されている。この減少や変化は、シカとカモシカ(以下、両種)の生息域や餌資源を巡る競合が原因であると考えられているが、両種の競合についての研究は少なく、詳細は不明である。本研究では両種が同所的に生息している岐阜大学位山演習林(岐阜県下呂市、以下位山演習林)にて、自生する植物と両種の糞を採集し、(1)DNAバーコーディングを用いた糞分析による両種の餌植物の種構成と、(2)顕微鏡を用いた糞分析による両種の餌植物の構成比率を把握・比較した。 (1)位山演習林にて採取した植物258種について、草食動物の食性解析に有用なバーコード領域であるtrnL P6loop領域の塩基配列データベースを作成した。また、2013年~2015年にかけて採取された両種の糞96サンプルから採食植物のDNAを抽出してtrnL領域をPCR増幅し、次世代シーケーンサーを用いて塩基配列を決定し、塩基配列データベースと照合することで採食植物を同定した。 (2)両種の糞133サンプル中に残存する植物片を顕微鏡観察によって5項目(ササ、単子葉類、双子葉類、樹皮・枝、その他)に分類し、それぞれの項目の割合を調べた。 (1)の結果より、両種の糞から多様な採食植物が検出された。両種間で出現頻度に差のある植物分類群が存在した(シカ:ササ、コナラ類が多い、カモシカ:ハイイヌガヤ、イヌツゲ、ネコノメソウが多い)。一方、餌植物の種構成全体には有意な差はなかった。一方、(2)の結果より、1年を通してシカはカモシカに比べてササを食べる割合が多く、一方カモシカはシカに比べて双子葉類を食べる割合が多いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予算の削減のため、本年度は次世代シーケンサーを利用した実験を追加することはできなかったが、植物の塩基配列データベースに関しては、調査地のフローラを概ねカバーできるだけのデータを集積できた。また、糞サンプルについても十分追加することができており、次年度の次世代シーケンサーを用いた実験の準備を順調に進めることが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で植物の塩基配列データベースを十分に充実させることができ、また次世代シーケンサーを使って同様の食性解析を行っている研究者らと実験プロトコル等のブラッシュアップをすすめることができた。次年度以降は次世代シーケンサーを用いたDNAバーコーディングのデータを積み上げるとともに、ここまでの成果を論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
年度末の学会(第127回日本森林学会大会)の出張旅費を本科研費から支出する予定であったが、残額が不足となったため、学会への出張旅費は別途予算より支出し、本予算の残額については次年度へ繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度当初に必要となる消耗品(データ整理関連および野外調査関連)に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)