2015 Fiscal Year Research-status Report
アレンと多重結合間の環化反応による新規多環性骨格構築法の開発
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15K18826
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安田 茂雄 金沢大学, 薬学系, 助教 (40647038)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アレン / C-H活性化 / C-C活性化 / アルキン / 環構築反応 / ロジウム触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の初期計画に沿って、ベンジルアレン-アルキン及びアレン-アルケン-アルキンを用いる新規環構築反応の開発を試みた。以下に示すように、計画した反応の開発に加えて、関連領域における新規環構築反応の開発にも成功した。 1)新規C-H活性化を利用したベンジルアレン-内部アルキンの環化異性化反応:ロジウム触媒をベンジルアレン-内部アルキンと処理したところ、ベンゼン環上のC-H結合の活性化を伴った環化異性化反応が進行し、2つの六員環とベンゼン環が縮環した三環性化合物が一挙に得られることを見出した。 2)アレン-アルケン-アルキンの分子内[2+2+2]環化付加反応:ロジウム触媒をアレン-アルケン-アルキンと処理することにより、分子内[2+2+2]環化付加反応あるいは環化異性化反応が進行することを見出した。本法においては、用いるロジウム触媒及びアレン上の置換基が反応性・化学選択性に大きく影響を与えることが明らかとなり、それらを適宜選択することによって、ビシクロ[4.2.0]骨格、ビシクロ[3.2.1]骨格及び八員環骨格を作り分けることができた。 3)アレニルアザシクロブタン-アルキンの分子内[6+2]環化付加反応:ロジウム触媒をアレニルアザシクロブタン-アルキンと処理したところ、アザシクロブタン上のC-C結合の活性化を伴った分子内[6+2]環化付加反応が進行し、アザビシクロ[6.4.0]誘導体が一挙に得られることを見出した。本法は、アザシクロブタンを4原子ユニットとして環構築反応に利用した希有な例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初、i) ベンジルアレン-アルキンのベンゼン環をヘテロ芳香環あるいはヘテロ原子含有オレフィンに置き換えた基質を用いる環化異性化反応、ii) ベンジルアレン-内部アルキンの環化異性化反応、iii) アレン-アルケン-アルキンの不斉[2+2+2]環化付加反応、の3つの反応開発を計画した。 i) に関しては、基質を合成することができず、反応の検討ができていない。 ii) に関しては、目的の環化異性化反応の開発に成功した。また、アルキン末端にケイ素官能基やハロゲンを導入した基質を用いた場合にも目的の環化体を収率よく得ることができたことから、これら官能基の変換による多様な環構築の可能性を示すことができた。さらに数種の重水素化実験を行い、反応機構を明らかにした。 iii) に関しては、光学活性な基質の合成が困難であったために、不斉環化付加反応は検討できなかった。しかし、アレンとアルケンをつなぐ側鎖を1炭素増炭した基質の反応を検討した結果、ビシクロ[4.2.0]骨格、ビシクロ[3.2.1]骨格及び八員環骨格の3種類の環骨格の合成を達成することができた。 さらに、当初計画していなかったが、アレニルアザシクロブタン-アルキンの反応を検討し、ロジウム触媒存在下で分子内[6+2]環化付加反応が進行し、アザビシクロ[6.4.0]誘導体が一挙に得られることを見出した。また、アザシクロブタンの代わりに、オキサシクロブタンを有する基質を用いても同様の環化反応が進行し、オキサビシクロ[6.4.0]誘導体を合成できることも明らかにした。以上示した通り、計画 ii)は達成できたものの、i)とiii) は達成できなかった。しかし、計画とは異なるものも含めて、3つの新規環構築反応の開発に成功したことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に記した通り平成28年度は、ベンジルアレン-アルキンの環化異性化反応の天然物合成への応用、アレン-アルケン-アルキンの不斉[2+2+2]環化付加反応の天然物合成への応用を検討する。しかし、本年度の研究において基質合成が達成できなかった例が多かったことから、これら天然物合成研究は困難であることが予想される。したがって、以下に示す新規環構築反応の開発も併せて検討する。 上述した、アレン-アルケン-アルキンの分子内[2+2+2]環化付加反応の応用展開として、アレン-アルキンと外部π成分による部分的分子間[2+2+2]環化反応の開発を行う。 具体的には、外部π成分にアルキンを用いるアレン-アルキンの部分的分子間[2+2+2]環化反応を検討する。予備実験から、ロジウム/BINAP触媒存在下で目的の[2+2+2]環化付加反応が進行し、多置換ベンゼン誘導体が高収率で得られることを確かめている。今後は、様々な基質の反応、特に非対称アルキンを用いた場合の位置選択性に重点を置いて検討を行う。 さらに、外部π成分にアルケンを用いるアレン-アルキンの部分的分子間[2+2+2]環化反応を検討する。予備実験から、アルケンとしてアクリルアミドを用いた場合に、ロジウム/BINAP触媒存在下で目的の[2+2+2]環化付加反応が高い収率で進行することを確かめている。今後は基質適用範囲の検討を行う。さらに、本環化反応で得られる環化成績体は不斉点を有するために、キラルロジウム触媒を用いる不斉環化反応への応用も試みる。
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