2015 Fiscal Year Research-status Report
ウエルシュ菌α毒素の好中球分化抑制による宿主免疫回避機構の解明
Project/Area Number |
15K19099
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
竹原 正也 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (40742705)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 好中球 / ウエルシュ菌α毒素 / 細菌感染 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガス壊疽の原因菌の一つであるウエルシュ菌は、一部の患者で好中球減少症を介した敗血症を短時間で引き起こし、抗菌薬の投与で阻止できない極めて予後の悪い感染症を引き起こす。しかしながら、このような劇的な症状の進行を引き起こす機構については解明されていない。我々は、ウエルシュ菌に感染したガス壊疽モデルマウスを用いた検討により、本菌に感染した宿主では骨髄や末梢血で高度に分化した好中球がα毒素依存的に減少することを見出した。また、ガス壊疽モデルマウスの感染局所での好中球の挙動や、α毒素が宿主免疫機能に与える影響を検討したところ、本菌の産生するα毒素により感染局所への好中球の集積が抑制され、これが感染局所での本菌の生存を促進することが示された。これらの結果より、ウエルシュ菌が産生するα毒素は全身で好中球数を低下させることで宿主の免疫機能を障害し、本菌の感染局所での宿主免疫回避に関与することが示唆された。また、マウス大腿骨より採取した骨髄細胞や精製したα毒素を用いた検討により、本毒素が未分化な好中球の分葉核球への分化を特異的に阻害することが判明した。さらに、変異型α毒素(H148G)を用いた検討より、α毒素の好中球に対する分化抑制作用が、本毒素のスフィンゴミエリナーゼ活性やホスホリパーゼC活性に依存することが明らかとなった。以上の結果より、α毒素による好中球の分化抑制が宿主の免疫機能を低下させ、これにより本感染症が劇的に進行する可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
α毒素による好中球の分化抑制の機構を解明するため、本毒素のスフィンゴミエリナーゼ活性やホスホリパーゼC活性と分化抑制作用との関連を検討することを当初の計画としていた。我々は毒素のこれらの活性に注目した検討をさらに進め、好中球の分化抑制がスフィンゴミエリナーゼ活性やホスホリパーゼC活性による脂質ラフトの障害によることを見出した。このように、当初の計画よりさらに進んだ研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討は以下の方針で行う予定である。 1. 野生型及びα毒素欠損型ウエルシュ菌感染モデルマウスより採取した骨髄細胞に含まれる顆粒球・単球系前駆細胞、骨髄芽球、桿状核球、及び分葉核球をそれぞれ定量し、骨髄中での好中球の分化に与える影響を解析する。 2. ウエルシュ菌感染モデルマウスより採取した骨髄細胞より好中球を分取し細胞の遊走能や貪食能を評価する。この結果より、ウエルシュ菌感染が好中球の機能に与える影響を評価する。 3. α毒素を静脈内投与したマウスより骨髄細胞を採取し、α毒素が骨髄内で好中球の分化に与える影響を解析する。
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Research Products
(8 results)