2017 Fiscal Year Research-status Report
自殺関連血中バイオマーカーからの自殺予測およびパターンの探索
Project/Area Number |
15K19239
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
土嶺 章子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 科研費研究員 (60649044)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | うつ病 / バイオマーカー / 抗うつ薬 / CREB / pCREB / オレキシン / 躁うつ病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、うつ病患者さんの血液サンプルから自殺に関連していると考えられる遺伝子および脂質を測定し、自殺ハイリスク群に対するバイオマーカーとしての感度特異度および予測パターンの検討を行うことを目的としている。今年度はうつ病、統合失調症、躁うつ病を含めた精神疾患患者さんのリクルートおよび健常者の血液のサンプリングを行った。これらの患者さんのうち、抗うつ薬服用中のうつ病患者さんの白血球由来の転写因子CREB濃度について健常者と比較した。その結果、抗うつ薬服用中のうつ病患者さんでは健常者と比較して、白血球由来の不活性型CREBと活性型pCREBは増加していることが認められた。活性型pCREBはその下流にある神経栄養因子(BDNF)の転写を促進することが報告されており、本研究で確認されたCREBとpCREBの増加は抗うつ薬服用によるものと考えられた。うつ病患者さんでは血中BDNFは低下していると報告されているため、末梢血由来のCREBまたはpCREBのほかに血中BDFN濃度と治療応答性との関連もさらに調査し、治療予測マーカーとしての有用性の検討が必要と考えられた。本研究は論文としてまとめており、国際誌に受理されている。 また、近年睡眠や食欲、エネルギーの恒常性に重要な役割をしているオレキシンについても調査をおこなった。うつ病、統合失調症、躁うつ病の患者さんを対象に、血中オレキシン濃度を健常者と比較し、症状の重症度や服薬状況との関連も検討した。その結果、精神疾患患者群では健常者群と比較して全体的に血中オレキシン濃度の低下が認められた。特に躁うつ病患者さんではオレキシン濃度の低下は顕著であった。脳脊髄液中のオレキシン濃度の測定も検討しており、バイオマーカーとしての妥当性の検討が必要であると考えられた。本研究は論文としてまとめており、現在国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在うつ病患者さんを中心にリクルートをしているが、自殺の既往のある対象者が少なくサンプリングに難航している。また、現在所属している精神・神経医療研究センター神経研究所はセンター病院の外来とは独立しているため、比較的症状の軽い患者さんが外来より紹介されてくるため、対象者の収集に遅れが生じており解析まで進めていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
うつ病患者さんだけでなく躁うつ病患者さんでも自殺念慮や自殺企図者は多いため、本研究の対象者について枠を広げて収集予定である。統計解析可能な数が集まり次第、自殺に関連する因子の解析に着手し、より特異度の高いバイオマーカーの探索を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度ははマイクロアレイ解析やタンパク濃度測定などの消耗品の代金を主に計上していたが、サンプリングに難航していたせいもあり、実験でしようする物品の購入頻度が比較的少なかった。また、移動のみで宿泊せずに参加できた学会もあり、旅費も必要予定額を下回った。 次年度は実験で使用する試薬以外に、統計解析するためのアプリケーションの使用料、論文校正や投稿料を計上予定である。また,国内外の学会参加費も支出予定である。
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Research Products
(4 results)