2015 Fiscal Year Research-status Report
前頭側頭葉変性症の患者死後脳を用いた診断・病態マーカーの探索・同定
Project/Area Number |
15K19483
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
陸 雄一 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (50748382)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 線条体 / 前頭側頭葉変性症 / TDP-43 |
Outline of Annual Research Achievements |
TDP-43に関連した前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)における,患者剖検脳を用いた検討を行った.我々は,FTLD-TDP患者で頻繁に,かつ早期から障害される部位として線条体に注目し,その病理学的変化についてFTLD-TDPとTDP-43関連筋萎縮性側索硬化症(ALS-TDP)の59剖検例を対象に解析した. 結果として,FTLD-TDP患者の全例で,線条体遠心系ニューロンの脱落,遠心系ニューロン軸索終末の脱落を認めることが判明した.これらの所見は,罹病期間にかかわらずみられ,発症2年以内に死亡した早期例でも著明な線条体遠心系の障害が確認された.線条体遠心系は,線条体の機能そのものを反映することから,我々の観察した病理学的変化は,FTLD-TDPにおいて線条体の機能不全が高率に,早期からおきていることを示唆すると考えられた.さらに,TDP-43タンパクの異常凝集も,全例において線条体遠心ニューロンの細胞体にみられた.興味深いことに,発症2年以内に死亡した早期例を中心に,遠心系ニューロンの軸索終末へのTDP-43異常凝集がみられた.これらの結果から,FTLD-TDP患者では,早期からTDP-43凝集体が遠心線維にそって投射先の神経核にまで到達している可能性が示唆された.さらにこういった変化は,ALS-TDP患者の過半数でも確認され,線条体遠心系の障害はTDP-43-proteinopathy disease spectrumに共通した病理学的変化と考えられた. この内容はJournal of neuropathology and experimental neurologyに投稿され,現在publishに向けてfinal revision中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りのペースで論文採択の見通しであるから.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでは線条体からの遠心系を検討したが,次年度は皮質から線条体への入力を検討する予定である.現在の研究と同様のモデルで,皮質から線条体への入力軸索終末を免疫組織化学的に同定し(vGLUT-1 IHCなど),その脱落や,線条体のどのようなcell groupへの入力が障害されやすいか,結果としてどのような臨床フェノタイプが出現するか,といったことを検討する.現在の研究と合わせて,皮質線条体系という大きなシステムが障害されることが,FTLD-TDPの臨床的発症に関与することを証明したいと考えている.
|
Causes of Carryover |
実験費用として目算した金額に達しない時点での実験成果により,論文投稿が可能になったため,残額が発生したため.そのため,具体的には,当初,物品日として計上した額の内,一次抗体,標本作成物品の使用が抑制された.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生した次年度使用額については,研究課題の後半の項目である,「TDP-43に関連した前頭側頭葉変性症における皮質-線条体系の病理学的検討」に使用される.
|