2015 Fiscal Year Research-status Report
うつ病患者における感謝プログラムの開発と有効性の検証
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15K20760
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 寛之 金沢大学, 保健学系, 研究協力員 (40586781)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポジティブ心理学 / 抑うつ / うつ病 / 感謝 / 許し / 自己受容 / 寛容性 / 外傷後成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
感謝プログラムの到達目標は、日常におけるストレサーを受け入れ、些細な出来事にも感謝することで、より前向きな姿勢を身に着けていくことを目的としている。臨床場面での応用の可能性を検証するため、うつ病患者が取り組み易く受け入れやすいプログラムを開発する必要があった。そこで、許しのエクササイズ(以下、EX)・感謝のEX・気づきのEXの3段階に分けてプログラムを進めていった。また、分かりやすいように平易な言葉を使用したことや論語・ことわざなど日常生活で見聞きした用語を引用し、プログラムの原則に組み込んでいった。以上のような工夫を施し、徐々に上記の姿勢を身に着けていけるようにした。 同意が得られ継続参加した外来通院中のうつ病患者5名に許しと感謝のEXを約3カ月実施してもらった(許しのEX,感謝のEX,気づきのEXをそれぞれ1カ月実施)。その結果、BDI-Ⅱの平均が開始前が中等症であったのに対し、介入後は極軽症に改善していた。また、ストレス耐性やその処理能力を示す首尾一貫感覚(SOC-13)、くよくよと考えてしまう傾向を示すネガティブな内省、自身の弱さを含めてありのままを受け入れる自己受容尺度、自身や状況、他者の寛容性を示す日本版寛容性尺度および危機的な状況を乗り越えた結果生じるポジティブな心理的変容の体験を示す日本版-外傷後成長尺度等が改善する傾向を示した。 事後のアンケート内容から、感謝のEXが取組みにくく、負担感がやや強いようであったが、プログラムの効果は全てのエクササイズがまあ効果的~とても効果的と概ねポジティブなものとして受け止められていたようだった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査時期が11月であったため、当初の予定より若干の遅れはあったものの年度内に調査を終えることができた。また研究対象者も途中脱落することなく継続参加でき、プログラムに参加することで効果が実感できるものであったなど一定の有用性が示すことができたと考えた。 持続効果を検証するべくフォローアップ調査を年度を超えて行っているが、平成28年4月から5月中には終える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
無作為比較試験を行いプログラムの有効性を検証し、エビデンスレベルを高める努力をする。
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Causes of Carryover |
今年度は学会参加を見合わせたため旅費の使用がなかった。研究対象者への謝金については、フィールドとなった調査機関より金銭的な利害関係が生じない条件で研究を許可された背景があり使用しなかった。 収集したデータ解析のためパソコンおよび統計解析ソフト、バックアップのための外付けハードディスク等が必要であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果の発表のため2つの学術総会において発表予定であり、そのための旅費が必要である。物品費として、BDI-Ⅱの質問票等や消耗品の購入とデータ入力補助者に対して謝金を計上する。
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Research Products
(3 results)