2015 Fiscal Year Research-status Report
ポピュラー音楽による「東ドイツ」アイデンティティの形成
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15K21047
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高岡 智子 静岡大学, 情報学部, 講師 (80552835)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東ドイツ / ロック / 文化政策 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東ドイツ時代に誕生したポピュラー音楽のひとつ、ロックに焦点を当て、音楽によるアイデンティティ形成の過程を文化政策と音楽史の観点から考察することを目的としている。 今年度は、東ドイツロックのミュージシャンとして活躍するディルク・ツェルナー(Dirk Zoellner)を中心に、インタビュー調査を予定していたが、産前・産後休暇と育児休業のためドイツ渡航を延期した。その代わりに、今後のインタビュー調査に向けて、東ドイツで活躍したミュージシャンと、再統一後のドイツでも活躍する東ドイツ出身のミュージシャン、また東ドイツロックから影響を受けた再統一後のドイツで活躍するミュージシャンの3つのタイプのミュージシャンについて、雑誌と音源から情報を集め、インタビュー調査の対象者の選定をおこなった。また、東ドイツの文化政策と映画に関する二次文献を整理することができた。今年度は、次年度のインタビュー調査に向けた下準備と、その土台となる文献整理を行うことができた。 今年度の成果は、これまで東ドイツ研究の枠組でのみ論じられてきたポピュラー音楽をドイツの文化潮流に位置づけ直し、インタビュー調査による「東ドイツ」アイデンティティの変遷の分析の下準備を行ったことである。東ドイツのロックがいまのドイツで「オストロック」として受容されていることは、東ドイツ研究を戦後ドイツ史の連続性から再考する必要があることを示唆している。本研究は、戦後ドイツから東ドイツ、さらに現在の再統一ドイツの「連関」に焦点を当てることで、音楽によるアイデンティティの形成のみならず、東ドイツの音楽文化のアクチュアリティを探ることを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は10月より産前休暇に入ったため、夏休みに予定していたドイツでのインタビューを実施することができなかったが、東ドイツの文化政策と映画に関する二次文献を整理し、綿密に読み解くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度11月までは育児休業のため研究活動を再開できないが、12月から予定していた研究内容について研究を進める。具体的には、雑誌とラジオ番組の分析から若者たちの音楽に対する意見と政治的な意見の推移を考察する。まず、東ドイツの党の広報雑誌と大衆向け雑誌を中心に、聴衆と批評家の東ドイツのポピュラー音楽に対する見解を整理・分析する。次に、ラジオ番組のなかで若者たちの意見がどのように反映されていた、あるいはされていなかったかを聴取者の手紙から分析する。
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Causes of Carryover |
今年度は10月から産前・産後休暇、その後育児休業を取得したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、今年度使用予定であった研究費を利用し、一次資料の収集をはじめ、ドイツでのインタビュー調査を予定している。
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Research Products
(2 results)