2015 Fiscal Year Research-status Report
リサイクルシステムを元にした未利用植物性バイオマスの低エネルギー・コスト型活用法
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15K21199
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
佐々木 千鶴 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (50452652)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオマス / 白色腐朽菌 / イオン液体 / 酵素糖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、バイオマスの全成分の有効利用(残渣リグニンの利用による廃棄物フリー化) と食品保存料や木材腐朽菌および細胞低毒性のイオン液体を用いた低エネルギー型の原料の前処理法およびプロセスで用いる酵素や微生物のリサイクルを元にした低エネルギー・コスト型のエタノール製造システムの構築を目的としている。バイオマス試料を木材腐朽菌処理する際の低エネルギー化を狙った食品保存料の添加実験では、4種類の白色腐朽菌を植菌して腐朽効果を調査したが、リグニンの減少による重量の減少には至らなかった。一方、細胞低毒性のイオン液体である酢酸コリンを用いたバイオマスの前処理実験では、乾燥バイオマスに対して酢酸コリンの重量を3倍量で添加し、130℃にて180分反応させることにより、未処理のバイオマス(酵素糖化により乾燥バイオマス1 gあたり0.09 gのグルコースが得られる)と比較すると高い酵素糖化率を示し、酵素糖化反応72時間後において、乾燥バイオマス1gあたり0.36 gのグルコースが得られることがわかった。また、この処理条件のエネルギー利益比(EPR、値が大きい方が前処理に要したエネルギーは低い)を算出し、他の物理的(粉砕)、化学的前処理(アルカリ処理)のEPRと比較したところ(それぞれEPRは0.47と0.67)、3.7と高い数値を示すことが明らかとなった。さらに、イオン液体を用いたバイオマスの前処理コスト削減を目的として、酢酸コリンにDMA、DMFやDMSOなどの高沸点の安価な有機溶媒を混合した前処理法の検討を行った。その結果、酢酸コリンとDMSOを重量比で1:1で混合してバイオマスに添加したものについて酵素糖化を行い、乾燥試料1 gあたり0.4 gのグルコースを生産でき、イオン液体の使用量の削減が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白色腐朽菌と食品保存料を利用したバイオマスの前処理実験では、当初の予定より遅れているが、イオン液体を用いたバイオマスの前処理実験では、エネルギー利益比やコスト削減を示唆する実験結果を得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
白色腐朽菌を用いたバイオマスの前処理実験については、実験手法を見直し、改善できることを見出して再度実験をし直す予定である。また、来年度は実験計画とおりに発酵阻害物質除去で用いる微生物やエタノール発酵で用いる酵母の繰り返し利用のための固定化実験に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
ガラス器具や試薬が所属実験室にあるもので賄うことができたため。 また、研究打ち合わせを電話やメールのみで済ますことができ、当初の予定よりも旅費が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験器具や試薬の購入に充てる。また、国内外の学会発表用の旅費として充てる。
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