2017 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における衛生政策の展開―腸チフス予防のためのインフラ整備を中心に―
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15K21254
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
星野 高徳 琉球大学, 法文学部, 准教授 (00749260)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 屎尿処理 / 下水処理 / 農村還元処分 / 都市衛生 / 都市近郊農業 / 屎尿流注所 / 屎尿貯溜槽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近代日本において、伝染病予防のための公衆衛生政策が大都市から地方都市、日本内地から植民地へと拡大した過程を検討することにより、各都市がそれぞれの財政状況、技術水準に応じて都市衛生関連のインフラを整備した過程、各都市における公衆衛生政策の相互関係を明らかにすることである。具体的には、戦前期日本の六大都市に含まれていた名古屋市・神戸市・横浜市・京都市と植民地都市であった台北市における屎尿処理政策を調査し、これまで研究してきた東京市・大阪市の事例との比較を行う。 平成29年度においては、名古屋市・東京市・大阪市における屎尿処理政策に関する資料調査を実施するとともに、名古屋市の研究について研究報告、論文の執筆を行った。名古屋市に関する調査では、『名古屋市公報』、『愛知県公報』などの行政資料や『新愛知』、『名古屋新聞』、『公衆衛生』などの新聞・雑誌記事を調査することにより、名古屋市において下水処理場が整備された経緯、屎尿流注所による下水処理と農村還元処分が併用されるようになった経緯、要因を明らかにした。また、名古屋市・東京市・大阪市の衛生政策や交通網を比較することにより、各都市で屎尿処理政策に相違が見られた要因を考察した。 名古屋市に関する研究成果については、論文を執筆・投稿するとともに、東京市・大阪市の事例や戦後の屎尿処理政策と比較を行うため、戦前から戦後における名古屋市・東京市・大阪市の屎尿処理政策の変化をまとめ、各都市で採用された政策の特徴を考察した。 以上の名古屋市に関する研究成果は平成29年5月の交通史学会で報告を行い、他の都市の事例や比較研究については、平成30年度以降に研究報告、論文の執筆を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に記載した名古屋市・東京市・大阪市の屎尿処理に関する資料収集、資料の検討を行い、名古屋市に関する論文の執筆・投稿をするとともに、財政面や交通面、農業面などの側面から東京市・大阪市との比較を行うことができた。名古屋市に関する論文が仕上がったという点では、比較的順調に進展している。 しかし、これまで調査を行ってきた名古屋市以外の都市の事例や比較研究については、学会発表や論文の執筆を行うことができていないため、各都市の比較研究について成果を出すことが今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
名古屋市・東京市・大阪市以外の都市に関する事例研究を積み上げるとともに、これまで検討してきた名古屋市・東京市・大阪市の事例を総括し、各都市の政策の相違、都市間の相互関係について考察する。 各都市の事例研究については、名古屋市と東京市・大阪市の比較が進んできたので、その成果を学会報告や論文の形で発表していく。また、各都市の比較を行うにあたって、東京・大阪・名古屋での調査も引き続き行うとともに、神戸市・横浜市・京都市・台北市での資料調査や比較研究も実施する。以上の事例研究、比較研究の成果をまとめるため、名古屋市・東京市・大阪市の事例と合わせて、研究報告をする機会を設ける。
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Causes of Carryover |
当初は名古屋市・東京市・大阪市に関する比較研究を学会等で報告するとともに、台北市・神戸市・横浜市・京都市などで調査を行う予定であったが、実際には名古屋市に関する資料調査、学会報告、論文の執筆に重点を置いたため、旅費や資料の購入などについては当初の予定額を下回ることになった。 平成29年度は当初予定していた学会報告や調査を十分に行うことができなかったが、平成30年度は夏季休暇中や年度末の時期に台北市・神戸市などで資料調査を行うとともに、名古屋市・東京市・大阪市の比較研究について学会報告を行う。 平成30年度の使用計画としては、引き続き、名古屋・東京・大阪での調査を継続するとともに、本研究の調査対象である台北市・神戸市などでの調査も実施し、交通費や滞在費、複写代等に使用する。また、学会報告や論文の執筆に向けて、出張旅費や都市衛生及び農業関連の図書・資料の購入にも使用する。
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Research Products
(1 results)