室内空気中エタノール濃度からみた「受動飲酒」の実態とその対策に関する研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K21260
• Research Institution: Fukuoka University
• Principal Investigator: 辻 雅善 福岡大学, 医学部, 講師 (30461809)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 受動飲酒 / 毛髪 / FAEE / エチル脂肪酸 / エタノール / 飲酒量 / 新生児

Outline of Annual Research Achievements

先の研究において、毛髪中のFatty Acid Ethyl Esters (FAEE) が飲酒量に関連があることを示し、正確な飲酒量の把握を可能にした。一連の研究において、飲酒歴のない者の毛髪中にFAEEが検出され、受動喫煙ならぬ「受動飲酒」の存在を疑った。近年、受動喫煙の有害性は様々な研究により明らかとなっているが、「受動飲酒」はその存在自体明らかでない。そこで、まず「受動飲酒」が実際に起こりうるのかを確かめ、さらに、一般集団を対象とした全国規模の疫学研究を実施する。「受動飲酒」を明らかにすることで、「受動飲酒」の有害性を検討するコホート研究の足掛かりとすることを目指している。
平成28年度において、一般集団において「受動飲酒」の有害性を検討する疫学研究を実施するために参加者をリクルートすることを目的とした。平成27年度の報告にて、平成28年度において、10組程度の新生児とその親の毛髪の採取、さらに親の飲酒量について質問する予定とした。参加者のリクルートは順調に進んでおり、報告時現在、10組以上の参加者にご協力頂いている。新生児は室内空気中以外のエタノールには曝露をされていない状態にあり、新生児の毛髪中FAEEはほぼ全て同居する親の飲酒により室内空気中に揮発されたものと仮定できる。今後の方針として、平成29年度の早い時期に、採取した毛髪と質問紙票から、毛髪中FAEEと室内空気中エタノールの相関関係を確認することを目指す。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成27年度の進捗状況はやや遅れ気味であったが、平成28年度は研究遂行上、大きな問題もなくおおむね順調に進展した。平成28年度の目標であった、「一般集団において疫学研究を実施するために参加者をリクルートすること」を目標人数までおおむね達成できた。報告現在も、着実に参加者のリクルートを実施しており、平成29年度中には我々が先の研究で確立した方法により毛髪中のFAEEを測定できるものと推測する。平成27年度の報告時に予定していた、新生児の毛髪中FAEEと、質問紙票から把握した親の飲酒量との相関関係も平成29年度中に検討できる見込みである。

Strategy for Future Research Activity

平成29年度においても、引き続き参加者のリクルートを実施し、目標対象者数の200名を目指す。さらに、10組程度の新生児とその親の毛髪の採取、さらに親の飲酒量についてデータを得たため、平成29年度の早い時期に、毛髪中FAEEと室内空気中エタノールの相関関係を確認することとする。なお、新生児は室内空気中以外のエタノールには曝露をされていない状態にあり、新生児の毛髪中FAEEはほぼ全て同居する親の飲酒により室内空気中に揮発されたものと仮定する。平成29年度後半では、リクルートした対象者から集めた毛髪の根本から2cm を用い、我々が先の研究で確立した方法により毛髪中のFAEE を随時測定していき、平成30年度の解析へと繋げていく予定である。

Causes of Carryover

平成28年度から、毛髪中のFAEEの測定を少しずつ進める予定であったが、参加者のリクルートに終始した。そのため、測定時に用いる試薬やガラス器具等にかかる消費が少なかった。

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成29年度は、毛髪中のFAEEの測定を実施する予定であるので、その際に使用する試薬等の物品を購入する。