2018 Fiscal Year Research-status Report
室内空気中エタノール濃度からみた「受動飲酒」の実態とその対策に関する研究
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15K21260
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
辻 雅善 福岡大学, 医学部, 講師 (30461809)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 受動飲酒 / 毛髪 / Ethyl Myristate / Ethyl Palmitate / Ethyl Stearate / Ethyl Oleate / 新生児 / GC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「受動飲酒」が実際に起こりうるかを確かめ、「受動飲酒」の有害性を検討するコホート研究の足掛かりとすることを目指している。 平成29年度にて、ガスクロマトグラフ・タンデム型質量分析装置にタンデムカラム及び固相マイクロ抽出法を用いた、高感度且つより微量な毛髪からFAEEを検出できる測定方法を確立した。平成30年度において、確立した測定方法を用いて、参加者から得た毛髪(新生児毛髪)中のFAEE濃度の測定を実施した。最終的に32組の参加者に協力を得ることができた。参加者特性は、男児56.4%、単胎87.5%、経腟分娩56.4%、低出生体重児18.8%、早産15.6%、平均在胎週数38.0週、平均出生体重2930.0 g、平均出生身長47.6 cm、平均出生頭囲32.6 cmであった。親の飲酒に関する質問紙票調査の結果、出産時の母親の飲酒割合は6.2%、父親の飲酒割合は50.0%、飲酒していた父親のうち新生児と同じ空間で飲酒していた割合は86.7%であった。FAEE濃度測定の結果、FAEE分画のうち、Ethyl Myristate、Ethyl Palmitate、Ethyl Stearateの濃度はすべての検体で分析可能であった。しかしながら、Ethyl Oleateは32検体中25検体が検出限界(0.005 ng/mg)以下であった。Ethyl Myristate、Ethyl Palmitate、Ethyl Stearate及びEthyl Oleate、各々の平均濃度は、0.025 ng/mg、1.154 ng/mg、0.032 ng/mg及び0.189 ng/mg(7検体平均)であった。新生児の毛髪中FAEEはほぼすべて同居する親の飲酒により室内空気中に揮発されたものと仮定できる。今後、親の飲酒と新生児毛髪中のFAEEの関連を解析し、「受動飲酒」の存在を確かめていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は研究遂行上、おおむね順調に進展した。平成29年度では、より微量な毛髪からFAEEを検出するため、ガスクロマトグラフ・タンデム型質量分析装置による測定法を確立した。平成30年度の目標であった、「一般集団における参加者から得た毛髪中FAEE濃度を測定すること」を協力いただいた32組終えており、目標はおおむね達成できたと考える。現在、参加者の毛髪(新生児の母親)を追加収集しており、今後、それらの毛髪中FAEEの測定を実施していく。さらに、質問紙票の解析を進めていく。これらの結果は、国内外の学会発表及び学術雑誌に投稿することで、社会・国民に発信していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度において、平成30年度末日までに収集した参加者の毛髪中のFAEE濃度の測定を実施していく。参加者のリクルートと同時に、質問紙票を用いて、飲酒時期、飲酒量、酒種類等を詳細に把握したため、これらの解析も進めていく。また、可能であれば、毛髪提供者宅の室内空気中の揮発性有機化合物をカーボンモレキュラシーブ充填の捕集管を用いて捕集する。一連の作業を行い、測定結果と質問紙票によるエタノール濃度または捕集管にて捕集したエタノール濃度の相関関係を検証し、「受動飲酒」の実態を明らかにしていく。そうすることで、「受動飲酒」の有害性を検討するコホート研究の足掛かりとすることを目指す。研究成果は、国内外の学会発表及び学術雑誌に投稿することで、社会・国民に発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
理由:参加者のリクルートを平成31年3月まで延長したため、それら参加者の検体の分析を行う必要性が生じた。そのため、次年度使用額が生じた。 使用計画:平成31年度は、追加収集した毛髪の処理、曝露物質の測定、結果の検定などに使用する。さらに、当該研究成果の学会および学術雑誌への報告を行う。
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Research Products
(1 results)