2018 Fiscal Year Annual Research Report
On the Authorial Intention in Interpretation: Focusing on Japanese Postwar Art
Project/Area Number |
15K21376
|
Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
河合 大介 岡山県立大学, デザイン学部, 准教授 (10625495)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 分析美学 / 意図主義 / 美術史 / 現代アート / 戦後美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの研究を踏まえた上で、総合的な検討を行った。 まず、作品解釈における「意図」のについてだが、前年度の研究では、「意図」が他の客観的な資料にもとづく情報と比較して特権的なものではないことがわかっている。このことから、「意図」概念そのものの再検討が必要だと考えられたため、特に哲学分野における「意図」概念についての研究及び専門家との意見交換を行った。その結果、「意図」がそもそも客観的な資料や事実に基づいて構築されるものであって、それらとは別に「意図」を想定する妥当性が疑わしいことが明らかになった。 また、赤瀬川原平の研究からは、作者の意図が制作時に明確になっているわけではないことがわかっている。しかし、赤瀬川は「模型千円札裁判」の過程で、その制作意図をしきりに尋ねられている。このような事情は、現代アートに特有の問題だと考えられる。たとえば、アーサー・ダントーは、知覚的には識別不可能なふたつの対象が、一方は芸術作品であり、他方はそうではないという事態が起こるのはなぜかという問題に取り組み、知覚的な特徴以外の要因が、芸術作品を成立させているとした。そういった要因のひとつとして意図が重視されていると考えられる。 本研究では、まず現代アートに特有の問題として、「意図」などの外的要因を参照する傾向にあること、しかし、その「意図」が他の客観的な資料や事実に対して特権的なものではないことがわかった。他方で、意図主義をめぐる議論の解決には、解釈が何を目的としているのかを明らかにする必要があるだろう。解釈が作者の意図を明らかにすることならば、意図を中心的に扱うことになるが、他の目的を持つ解釈もあわせて検証・整理したうえで、改めて意図主義をめぐる議論を検討することが必要であるだろう。
|