2015 Fiscal Year Research-status Report
法律相談論の効果と実効化条件:法理論と適用実践の相互影響過程に関する実証的研究
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15K21490
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
山田 恵子 京都女子大学, 法学部, 准教授 (80615063)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 法律相談 / 弁護士 / 司法書士 / 法教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、相談者中心型の法律相談論が法実務に与えた影響・効果および当該理論が法実務に影響を与えうるための諸条件を解明し、真に実効的な市民・法実務家間のコミュニケーション論の構築を目指すものである。とくに、本研究は法律相談論が法律相談過程のみならず「法実務全般」に与えた影響を、当該理論を適用する法実務家への調査により、「規範的側面」と「手段的側面」の両面から検証し、法律相談論の適用前後を通じた法実務の変容過程・構造を明らかにするとともに、法理論とその適用に関する一般理論(=再帰的検証にかかる方法論)に寄与することを目的とする。 研究の第1年目である2015年度は、①相談者中心型の法律相談論に関する国内外の文献を渉猟し、当該理論の目的、法専門家の役割観念、コミュニケーション技法の在り方についての特徴等を整理・検討するともに、②法科大学院等で法律相談論を受講し、その適用を試みる法実務家15名(弁護士・司法書士)へのインタビュー調査(予備調査)を実施した。インタビュー調査の結果、①法律相談論は、当該実務家によって「行為」・「姿勢」・「スキル」の3つの位相で捕捉されていること、②その実際的・具体的影響は、(a)法律相談過程以外(交渉・調停・訴訟過程等)に及び、(b)適用対象者の範囲も広範化していること、さらに(c)法専門家役割の重点が党派性から交渉性へ移行し、(d)手続的・実体的選択肢が豊饒化されている様相が確認できた。 以上の知見・成果を基礎に、研究の第2年目(2016年度)は、アンケート調査・質的調査(本調査)に取り組みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の第1年目(2015年度)の目標は、①法律相談論に関する国内外の文献の渉猟と整理、②法律相談論を受講しその適用を試みる法実務家(弁護士・司法書士)への法律相談論の影響にかかるインタビュー調査(予備調査)の実施、③以上の整理・調査を踏まえた、法科大学院における法律相談論(に該当する科目)の受講生に対する「法専門家役割意識・倫理意識に関する質問票」の作成とその実施であった。①および②については、上記の通り概ね完了したが、③については着手できていない。 以上の如く研究の進捗状況が「やや遅れている」理由としては、(a)②(予備調査)の作業に想定以上の時間を要したこと、そのため(b)②の結果を踏まえて作成すべき③のアンケート調査票作成・実施に従事できなかったこと、さらに(c)学内業務との調整が困難であったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の第1年度(2015年度)の上記成果・遅れをふまえて、研究の第2年目(2016年度)においては、本研究の中心となるアンケート調査および質的調査を実施し、研究の進展を図る予定である。 具体的には、①アンケート調査として、各法科大学院における法律相談論(に該当する科目)の受講生(計90名程度)を対象に、当該科目を受講する動機づけを自由回答方式で尋ねるとともに、法専門家役割意識・倫理意識に関する質問票調査を実施する。さらに、②質的調査として、①のアンケート調査実施時にインタビュー調査を了承した法実務家の中から調査対象者として10名強の選定を行い、法律相談論適用による手段的側面の変化(書類作成・手続選択等)に関わるインタビュー調査を実施する予定である。 以上のアンケート調査とインタビュー調査の結果を総合し、法律相談論が法実務に与える影響(規範的側面と手段的側面)と影響を与えるための諸条件について詳細に検討する。また、上記研究の推進にあたっては、研究会等で多くの研究者・実務家と交流を図り、意見交換ならびに情報収集を行うこととする。
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Causes of Carryover |
先述の通り、研究の進捗状況はやや遅れている状況にあり、当該年度に実施予定であった法科大学院における法律相談論(に該当する科目)の受講生に対する「法専門家役割意識・倫理意識に関するアンケート調査」の実施が未着手である。 その結果、被調査者(90名程度)に支払うべき「謝金・人件費(10万円)」、当該調査にかかる旅費・郵送費(20万円)等を支出できなかった他、当該調査の記録用に購入予定であったノートPC(20万円強)を購入していない状況である。 以上により、50万円強程度の次年度使用額(本年度未使用額)が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(2016年度)は、上記の調査を実施予定であり、本年度の未使用額を含め、使用計画は以下の通りである。 (1)設備備品費(ノートPC、デスクトップPC、ビデオカメラ、書籍):50万円、(2)消耗品費(書籍、データ保存用メディア、印刷用紙・インク等):10万円、(2)旅費(学会参加費、インタビュー調査、資料収集):20万円、(3)人件費(専門的知識の提供・データ反訳料、質問票調査謝礼金):50万円、(4)その他(研究協力依頼状等印刷費、複写費):2万8309円。
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